Newsletter Volume 32, Number 1, 2017

受賞者からのコメント

nl32_1_01_oota

学会賞を受賞して

広島大学大学院医歯薬保健学研究院 生体機能分子動態学研究室
太田 茂

 この度「in vitro/in vivo代謝モデルを用いたチトクロームP450による薬物代謝反応に関する研究」という題目で日本薬物動態学会学会賞の栄誉を賜り,第31回年会(松本)にて受賞講演を行わせて頂きました.日本薬物動態学会会長大森 栄先生,学会賞選考委員会の先生方をはじめ関係の諸先生方に心より感謝申し上げます.また受賞に関わる研究にご協力頂きました広島大学生体機能分子動態学研究室の教員(吉原新一先生(元広島国際大学教授),北村繁幸先生(現日本薬科大学教授),杉原数美先生(現広島国際大学教授),佐能正剛助教)及び学生の皆様にお礼申し上げます.

 私は東京大学薬学部卒業後,薬品代謝化学教室(広部雅昭教授)の下で修士課程,博士課程を過ごさせて頂き,1981年に「新NAD(P)Hモデルの設計と機能に関する生物有機化学的研究」というタイトルで学位を取得いたしました.その後スイス連邦工科大学において博士研究員として有機光反応研究に携わり,1983年に広部先生の研究室の助手として戻って参りました.その時より薬物代謝過程の生物有機化学的アプローチについて研究をスタート致しました.当初はラット肝からミクロゾーム画分を調製する事も他の教室に習いに行くなど,極めて初歩から試行錯誤で薬物代謝に取り組みました.その中で薬物代謝反応を非酵素的に再現する手法を確立し,代謝反応機構の解明や代謝物の大量生成法について成果を挙げることができるようになって参りました.

 1997年より広島大学医学部総合薬学科社会薬学研究室を担当するようになり,吉原先生,北村先生,杉原先生と一緒にアルデヒドオキシダーゼなどの代謝酵素の研究や環境化学物質の代謝活性化に関する研究に着手致しました.現在はヒト肝キメラマウスを用いたヒト代謝予測に関する研究等について佐能先生とともに展開しております.

 それぞれの時代でその時の興味に駆動され研究を行って来たように思われますが,今となり改めて振り返ってみますと,創薬における代謝に関する支援を中心とした研究内容となっているように思えます.

 今回の受賞に対しまして関係各先生方に再度御礼を申し上げるとともに,今回の受賞研究の成果が創薬の現場で少しでもお役に立てることを願って受賞のご挨拶とさせて頂きます.