Newsletter Volume 38, Number 1, 2023

受賞者からのコメント

顔写真:鈴木美記子

ベストポスター賞を受賞して

国立がん研究センター研究所 分子薬理研究分野
鈴木美記子

 この度,日本薬物動態学会第37回年会におきまして「高輝度蛍光ナノ粒子を活用した抗体薬腫瘍内分布の抗原依存性と不均一性のイメージング解析」の演題でベストポスター賞という名誉ある賞を賜り,大変光栄に思います.年会長の平林英樹先生をはじめ,ご審査いただきました選考委員の先生方,ならびに日本薬物動態学会関係者各位に厚く御礼申し上げます.

 高輝度蛍光ナノ粒子 (Phosphor integrated dot; PID) を標識プローブとして使用するPID-imagingは,一般的な免疫染色にはない高い感度と定量性を兼ね備えた次世代のイメージング解析技術です.抗体が得られる標的であれば実施が可能で,一般的な免疫染色との多重染色に用いることも可能です.今回の研究では,従来の細胞株移植モデル (CDXモデル) よりも患者腫瘍の腫瘍微小環境や不均一性をよく反映するとされる患者腫瘍移植モデル (PDXモデル) を用いて抗HER2抗体Trastuzumabの分布をPID-imagingで評価しました.

 細胞あたりのTrastuzumab結合数を評価した結果,PDXモデルにおけるTrastuzumab分布にはCDXモデルよりも強く,必ずしもHER2発現に依存しない不均一性が認められました.不均一性の要因の1つとして血管分布が考えられ,Trastuzumabの分布は血管からの距離に依存することが示されました.これらの結果から,PID-imagingは腫瘍組織内の抗体薬分布の可視化・定量化,さらには腫瘍微小環境と薬物動態の関連性の解明に有用と考えられ,今後多くの薬剤や非臨床・臨床研究への展開が期待されます.

 最後に,本研究はコニカミノルタ株式会社との共同研究として実施いたしました.この場をお借りしてコニカミノルタ株式会社の皆様に深く御礼申し上げます.また,本研究遂行にあたりご指導をいただきました国立がん研究センター研究所 分子薬理研究分野の濱田哲暢分野長ならびに研究を支援いただいたラボスタッフの皆様に同じく感謝を申し上げます.