Newsletter Volume 30, Number 2, 2015

書籍紹介

医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法バリデーションガイドライン解説  ―LCガイドライン― 

医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法バリデーションガイドライン解説  ―LCガイドライン―

バイオアナリシスフォーラム(JBF)/編
発行 2015年2月,判型 B5,ページ数 212,出版社 じほう

 2014年4月,本邦初の生体試料中薬物濃度分析法バリデーション(BMV)ガイドラインが施行された.生体試料分析は夾雑する未知成分の影響を受け得るため,その品質確保の方法論は数多くの議論を経てきた.本書ではガイドライン制定の根底にある堅牢な分析法開発を意識し,章を追うごとに踏み込み度を増した解説を試みている.規制文書の解説から分析法における留意点までを詳解し,申請担当者から若手研究者まで幅広く活用されることを意図している.

 第I章は今日までのBMVに関する背景や経緯をできるだけ分かり易く纏めており,日本のバイオアナリシスの状況を垣間見ることができる.また,ガイドライン制定の趣旨に加え,BMV研究班の組織構成やガイドラインの法的位置付けについても整理している.

 第II章はガイドラインの逐条解説として,素案作成者やBMV研究班,関連団体等の協力研究者の議論を踏まえ,適宜,文献等を参照しながら評価項目の意味と必要性を解説している.更にパーシャルバリデーションの項では,分析法の変更点と必要となる評価項目を独自の早見表形式でまとめ,変更点毎に一目でわかるような工夫も加えている.また,新しい概念としてガイドライン(付録)に収載された“段階的アプローチ”は第3回AAPS/FDA Bioanalytical Workshop(2006年)にて議論されたトピックスで,開発早期における分析法の検証方法として期待される考え方である.ここでは国内での議論も示しつつ,その有用性を詳しく解説しており,貴重な情報である.

 第III章は参考情報として視点を変えた情報提供を試みている.ガイドライン解説書として異色なのは,例えば分析法開発の項でエレクトロスプレーイオン化LC-MS/MS法を例に,前処理方法を含む分析条件の設定,最適化,トラブルシューティングまで,要領の良い開発方法を惜しみなく披露している点である.他にISR(incurred sample reanalysis)の実施に関わる留意点では,筆者を含め実際に国内外でのISR実施経験を持つ研究者が議論し,“(悩ましい)試料選択の例”などでは賛否両論,原型を留めないような修正を経て出版に至ったパートも含んでいる.

 本書は分析業務の全般にわたり,要所において豊富な重要情報を提供することも意図している.筆者も常に手元において見直しているが,この上なく便利な一冊である.生体試料分析に関わる多くの研究者にとっても同様に有用な一冊となることを願っている.

酒井氏写真 帝人ファーマ株式会社 医薬開発研究所 動態研究部
酒井和明