Newsletter Volume 34, Number 5, 2019

学会 道しるべ

顔写真:上岡宏規

12th International ISSX Meetingに参加して

高崎健康福祉大学臨床薬物動態学分野
上岡宏規

 高崎健康福祉大学臨床薬物動態学分野の上岡宏規と申します.この度は,このような執筆の機会をいただきニュースレター編集事務局の皆様に厚く御礼申し上げます.

 今年の7月にOregon Convention Centerで開催された12th international ISSX Meetingに参加するにあたり,2019年度若手研究者海外発表支援事業のご支援を賜ることができ大変光栄に思っております.日本薬物動態学会会長の山崎浩史先生,国際化推進委員会委員長の大槻純男先生ならびに,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.

 本会に参加して,ISSXでは医薬品開発のための評価系の開発に関係する内容の発表が多い印象を受けました.また,big dataを用いて解析が行われている発表が複数あり,この様なデータ解析は海外で先行している分野ではないかと感じました.海外施設と共同研究をおこなう際には,このような取り組みをしている施設と協調することで、薬の効果が得られる人と得られない人の情報を解析することができ、それらの原因の解明や新たな治療標的の発見等につながるのではないかと思いました。

 数ある最新の研究報告を聴いた中から,私が特に興味を持った演題を紹介させていただきます.SUBSTRATE RECOGNITION BY CYTOCHOME P450s (Symposia 6, Emily E. Scott, University of Michigan, USA)

 CYP1A1は主に多環状芳香族炭化水素を含む様々な化合物を酸化する代謝酵素として知られています.これまでに,CYP1A1に関して低分子α−ナフトフラボンとの結合部位が確認されていますが,基質認識性についての詳細は明らかとなっていません.今回の報告では,ベルガモチンおよびエルロチニブを用いて結合部位に関する検討をおこなったところ,CYP1A1は結合部位を局所的に拡大することで,様々なサイズの化合物を基質として認識できることを見出されておりました.私は,P-糖タンパク質(P-gp)が関与する薬物耐性に関する研究をおこなっておりますが,P450と同様に基質認識性について明らかではありません.P-gpは結合部位が複数あることで,幅広い基質を認識していることを示唆する報告もありますが,Scott博士らが発表した結合部位が基質によって局所変化するという報告は,P-gpにもあてはまる可能性を想起させられ,興味深い内容でした.

 ISSXではNew investigator sessionという若手研究者向けのRound table sessionがあり,こちらにも参加して参りましたのでご紹介したいと思います.本sessionで参加者は,ランダムに円卓に割り振られます.各テーブルに4人のmentorが交代で訪れ,各々異なるテーマについてdiscussionや質疑応答をおこないました.私が座ったテーブルのmentorにはFDAの職員,Genentech社の研究員,大学教員の方々が割り当てられました.普段,企業研究者や行政の方,他大学の先生方とお話できる機会は限られていると思いますので,本sessionに魅力を感じました.JSSXでも,このようなsessionを設けることで,若手研究者のモチベーションの更なる向上につながるのではないかと感じました.最後に,海外の学会に行くにあたり注意をした方が良かったと感じた点を紹介させていただきます.今回の場合ですと,気温です.現地の気温は寒暖差が大きく,さらに会場は上着が必要な程,冷やされておりました.せっかくの学会で体調を崩してしまっては有意義な時間を過ごせなくなってしまうので,出国前に現地の生活環境ついても調査しておくことをお勧めさせていただきます.

 本体験記が僅かでも皆様のお役に立ててれば幸いに思います.末筆ながら,本事業の益々のご発展をお祈り申し上げます.

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写真A: Oregon convention center外観
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写真B: Symposium会場
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写真C: New investigator session会場
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写真D: 報告者の発表風景

写真.学会会場

A: Oregon convention center外観
B: Symposium会場
C: New investigator session会場
D: 報告者の発表風景