Newsletter Volume 31, Number 6, 2016

展望

第31回ワークショップ/第11回ショートコースのご案内

第31回ワークショップ:2017/5/17-18、第11回ショートコース:2017/5/17

https://www.jssx.org/workshop/2017/

千葉雅人

日本薬物動態学会第31回ワークショップ開催にあたって

代表世話人 千葉 雅人
(大鵬薬品工業株式会社 薬物動態研究所)

 2017年5月17日(水)と18日(木)の両日,第31回日本薬物動態学会ワークショップ(WS)を一橋講堂(東京都千代田区)にて開催いたします.今回のテーマは,「The Phase I ~創薬の夢を臨床で実現するためのマイルストーン~」です.臨床開発での成功確率の高い開発候補化合物の探索及び化合物(構造)最適化のプロセスに携わる薬物動態研究者の目標は,前臨床試験結果から推定される毒性との十分な乖離をもって薬効を発揮できる臨床薬物動態を実現することであり,言うまでも無く,Phase I は,そのマイルストーンになります. 本ワークショップでは,

* セッション1: モデリング&シミュレーションによる前臨床から臨床への橋渡し
* 【日本薬物動態学会&医薬品医療機器総合機構(PMDA)合同企画】次世代審査・相談体制におけるモデリング&シミュレーション
* セッション2: マイクロドーズ臨床試験の活用
* セッション3: 国際共同治験・臨床開発の中での日本の第I相試験
* セッション4: Lost in Extrapolation: 予期せぬ臨床薬物動態の事例集

を予定しております.

 セッション1では,前臨床段階で収集されるデータに基づいて,臨床での薬物動態をどこまで,Modeling & Simulation (M&S) できるか,M&Sから得られた予測データをどのように活用すべき(しているか)を,議論・情報共有したいと思います.製薬企業におけるM&S戦略の現状と展望について,製薬協・基礎研究チームの岩坪隆史先生からご発表いただきます.さらに,臨床での個人間変動の要因を組み入れながら後期臨床開発段階での薬物動態試験に役立てていくシームレスなM&S戦略や医薬品開発におけるQuantitative Systems Pharmacology (QSP) Modelingの現状と展望について,アカデミア及び製薬企業からご紹介いただきます.
初日の最後には,【日本薬物動態学会&医薬品医療機器総合機構(PMDA)合同企画】として,「次世代審査・相談体制におけるモデリング&シミュレーション」のセッションを設けました.PMDAからの3名の先生方によるご講演(①モデリング&シミュレーションを中心にした薬物動態・臨床薬理審査の最新の動向,②申請電子データに関する総論(CDISCを含め全体像),③次世代審査における臨床薬理データの評価)に引きつづき,ラウンドテーブル・ディスカッションを行い,製薬企業から電子的に提出された生データが,どのように解析され,治験相談や審査に活用されるのか,情報共有や議論できる場となることを期待しています.

 マイクロドーズ臨床試験は,NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトの推進により実用化が図られてきました.セッション2では,まず,NEDOプロジェクトを率いてこられた杉山雄一先生(理化学研究所イノベーション推進センター)に基調講演をいただきます.引きつづき,14C放射性標識化合物を用いたマイクロドーズ国内臨床試験の現状と展望,マイクロドーズ臨床試験の創薬に対するインパクト並びに国内PETマイクロドーズ臨床試験の現状と創薬に対するインパクトを,それぞれ,CRO,製薬企業,公的研究機関の先生方からご講演をいただき,幅広い視点からの活用と将来の展望を議論したいと思います.

 セッション3の基調講演として,大分大学医学部臨床薬理学講座の上村尚人先生から,早期臨床試験の意義と展望~日本先行型グローバル展開の可能性についてお話しいただきます.引きつづき,薬物動態研究者と臨床薬理開発担当者が協力して,日本での第I相試験を成功させるための要件・留意点について,内外資両方の製薬企業から3名の先生方にご講演を頂く予定です.多角的な視点での議論の場を提供できればと思い企画しました.

 薬物動態予測のテーマは,2016年度のショートコース(臨床薬物動態予測を支える最新技術)を含めて,多くの学会やシンポジウムにおいて度々取り上げられるテーマです.多くの場合,成功例が取り上げられますが,本ワークショップのセッション4では,予期せぬ臨床薬物動態に遭遇した事例を集めました.「予想外の動態」から,化合物の最適化に必要な新たな評価系を構築したり,戦略の変更により開発を進めた事例などの「苦労話」を,製薬企業の5名の先生方からご発表いただきます.基調講演には,楠原洋之先生(東京大学大学院薬学系研究科分子薬物動態学教室)にご講演いただきます.

 今回ご講演をお引き受けいただいた先生方には,この場を借りて厚く御礼申し上げます.ワークショップという名のとおり,聴衆参加型のカジュアルな会合ですので,多数の皆さまのご参加を心からお待ちしております.


田端健司

日本薬物動態学会第11回ショートコース開催にあたって

実行委員長 田端 健司
(アステラス製薬株式会社 薬物動態研究所)

 日本薬物動態学会ワークショップの初日となる2017年5月17日(水)に,第11回ショートコースを東京にある学術総合センター中会議場にて開催いたします.薬物動態研究者における医薬品研究開発におけるモデリング&シミュレーション技術発展への貢献は,先人達の魂を継承した私たちの誇りです.ConventionalなPK/PD解析から,複雑な数学的モデリングのニーズが高まり,それをサポートする解析ソフトウエアが開発されてきました.80年代のマイコンによる薬物動態解析を先駆けに,パソコンの進歩とともに市販ソフト,生理学的薬物動態モデル(PBPK)の解析ソフトが開発され新薬研究開発に欠かせないツールとなっています.さらに,biologyに根差したsystems pharmacology分野の研究領域への拡がりを追い風に,薬物動態研究者の得意とする定量的予測Quantitative systems pharmacology(QSP)への応用が注目されています.

 本ショートコースでは,ワークショップのテーマである「創薬の夢を臨床で実現する」ことに貢献する薬物動態研究者が活用するモデリング&シミュレーションソフトの特集を組み,私たちの強みである臨床予測性向上力を再認識したいと考えます.さらに医薬品として患者貢献を果たした薬物治療におけるPBPKモデリングの応用事例も演題に組み入れました.このように,今般の新しいM&S技術を活用しているトップランナーたちの講演を聴講いただきながら薬物動態解析の醍醐味を実感いただき「創薬の夢」を形に変える研究へと活かしていただければと思います.例年通り,研究者によるフランクな議論ができる会合ですので,多数の皆様のご参加を心からお待ちしております.講演にご協力いただける先生方にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます.ありがとうございました.