受賞者からのコメント
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ベストポスター賞を受賞して北海道科学大学 薬学部 薬剤学分野
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この度,日本薬物動態学会第40回年会におきまして,「Intrapulmonary delivery of pirfenidone-loaded succinylated gelatin-coated liposomes improves pharmacokinetics and antifibrotic effects in fibrotic lungs」という演題で,ベストポスター賞(応用研究領域)という名誉ある賞を賜りました.年会長の山下富義先生をはじめ,ご審査いただきました選考委員の方々,並びに日本薬物動態学会関係各位の皆様に厚く御礼申し上げます.大変光栄に思います.
間質性肺疾患の代表例である肺線維症,特に原因不明とされる特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)は,肺組織の高度な線維化により蜂巣肺を形成し,呼吸器機能の低下というQOLに著しい影響を及ぼすうえ,最終的には死に至るという予後不良の難治性疾患です.本邦では現在IPF治療薬としてピルフェニドンとニンテダニブの2種の抗線維化薬が承認,臨床使用されていますが,いずれも副作用の発現により投与量の減量や中止を余儀なくされるケースが少なくありません.そのため,新たな治療薬候補化合物の開発研究を進めると共に,副作用を軽減できるより選択的に肺内の病巣へ薬物を送達する技術も必要とされています.
我々はこれまでに,種々の難治性呼吸器疾患治療を指向して,肺内における薬物動態解析および肺投与型製剤の構築研究を進めてきました.同時に,様々な臓器で起こりうる線維症(化)という病態に対応可能なドラッグデリバリーシステムを開発してきました.本研究では,低分子量かつ高い水溶性をもつピルフェニドンについて,線維化した肺では直接投与しても極めて速やかに消失するという動態を改善することを目指しました.最終的に開発したサクシニル化ゼラチンでコーティングしたピルフェニドン封入リポソームは,1)線維組織に長時間保持される,2)線維化病巣で高発現する酵素が薬物放出トリガーとなるという2つの機能によって,病巣でのみ長時間滞留し,抗線維化作用を発揮させることができます.実際に,ブレオマイシン誘発性肺線維症モデルマウスに,本製剤を肺投与したところ,ピルフェニドン水溶液肺投与時と比較して,肺におけるAUCが200倍以上に増大しました.さらに,臨床使用されているよりも少ない投与回数で,高い抗線維化作用が得られました.今後はこの知見を基に,様々な難治性呼吸器疾患や他臓器における線維化疾患の治療に応用できるドラッグデリバリーシステムを開発したいと考えています.
最後になりますが,本研究の遂行に際しましてご協力いただきました皆様に,この場をお借りして厚く御礼申し上げます.

