Newsletter Volume 41, Number 1, 2026

受賞者からのコメント

顔写真:佐々木康樹

ベストポスター賞を受賞して

熊本大学大学院 薬学教育部 微生物薬学分野
(熊本大学大学院生命科学研究部 微生物薬学分野 – Laboratory of Pharmaceutical Microbiology)
佐々木康樹

 この度,日本薬物動態学会第40回年会において,ベストポスター賞という名誉ある賞を賜り,大変光栄に存じます.本稿をお借りして,ご審査いただきました選考委員の先生方ならびに関係者の皆様に,心より御礼申し上げます.

 モノクローナル抗体(mAb)の血液脳関門(BBB)透過性の向上は,中枢疾患治療薬の開発において極めて重要な課題の一つです.我々は先行研究において,BBB透過性を有する7アミノ酸の環状ペプチドSLSHSPQ(SLSペプチド)をmAbのH鎖C末端に融合することで,抗体の脳移行性が向上することを示してきました.しかし,SLSペプチドの活性はジスルフィド結合による環状構造の維持が必須であり,従来のC末端融合法ではその構造制御が困難であると考えられてきました.そこで本研究では,SLSペプチドの環状構造を安定的に維持するために,抗体の立体構造を利用して,抗体内部にSLSペプチドを融合させたSLSペプチド融合抗体を作製しました.そして,これらSLSペプチド融合抗体のBBB透過性能を評価し,SLSペプチドのBBB透過性をより高める融合部位の同定を目的としました.その結果,SLSペプチドを融合する部位によってBBB透過性が変化することが示され,特にFc2領域への融合は,mAbの物理化学的特性や薬理活性,FcRn結合能を損なうことなく,最も高いBBB透過性を示すことが明らかとなりました.これらの結果から,Fc2領域はBBB透過性環状ペプチドの融合部位として有望であり,本手法はmAbのBBB透過性を効率的にかつ汎用的に向上させる基盤技術となることが期待されます.

 最後に,本研究の遂行にあたり多大なるご指導を賜りました熊本大学微生物薬学分野の伊藤慎悟准教授,大槻純男教授,学生の皆様,ならびに機能分子構造解析学講座の中村照也准教授,東京薬科大学創薬基盤科学教室の降幡知巳教授,森尾花恵助教に深く感謝申し上げます.