受賞者からのコメント
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ベストポスター賞を受賞して金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 創薬科学専攻 薬物代謝安全性学研究室
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この度,日本薬物動態学会第40回年会におきまして,「Stress granules formed via liquid-liquid phase separation sequester pregnane X receptor and suppress its downstream gene expression」という演題でベストポスター賞を賜り,大変光栄に存じます.ご審査いただいた先生方をはじめ,有意義な議論を交わしていただいた皆様に心より御礼申し上げます.
液-液相分離(Liquid–Liquid Phase Separation: LLPS)は,核酸やタンパク質が細胞内を一過的に区画化することで,遺伝子発現制御やストレス応答など多様な生理学的機能を果たすことが知られています.本研究では,LLPSによって形成される構造体の一つであるストレス顆粒(Stress Granule: SG)が薬物代謝酵素の発現を制御するか否か,さらにその分子機構を明らかにすることを目指しました.ヒト肝キメラマウス由来初代培養肝細胞であるHepaSH細胞および肝がん由来HepaRG細胞に,SG誘導剤である亜ヒ酸ナトリウム(Ars)を処置したところ,cytochrome P450(CYP)3A4のmRNA発現量は有意に低下しました.さらに,HepaSH細胞において,プレグナンX受容体(PXR)のリガンドであるリファンピシンの処置によるCYP3A4発現量および活性の誘導がArsの共処置により抑制されました.また,mCherry-PXRおよびSGマーカーであるRas GTPase-activating protein-binding protein1(G3BP1)-mClover3を共発現させたHepG2細胞をライブセルイメージングで評価したところ,PXRとG3BP1は液滴を形成し,これはストレス応答阻害剤であるISRIB処置により減弱しました.最後に,FLAG-TurboID-PXR安定発現HepG2細胞を用いてTurboID法を行ったところ,PXRとSG関連タンパク質との相互作用がArsの処置により増強されることを明らかにしました.本研究により,SGがPXRを捕捉することでその転写活性を抑制し,結果として薬物代謝酵素の発現が低下することが示されました.
最後になりますが,本研究を共に遂行しました当研究室卒業生の磯野元輝博士,黒澤キアム博士,ならびにご指導を賜りました元助教 中野正隆先生(現パデュー大学),准教授 深見達基先生,教授 中島美紀先生にこの場をお借りして深く御礼申し上げます.

