受賞者からのコメント
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ベストオーラル賞を受賞して大阪大学先導的学際研究機構・微生物病研究所 BIKEN次世代ワクチン協働研究所
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この度,日本薬物動態学会第40回年会におきまして,「Hypertonic intranasal vaccines gain nasal epithelia access to exert strong immunogenicity」という演題で,ベストオーラル賞を賜り大変光栄に思います.ご審査いただきました先生方,ならびに日本薬物動態学会関係者各位に厚く御礼申し上げます.
鼻からスプレーや液滴の形でワクチンを接種する経鼻ワクチンは,ワクチン投与部位である上気道へ強く抗体やT細胞を強く誘導することが期待されています.このため,上気道を最初の感染部位とする呼吸器ウイルスの感染を効率的に防ぎ,個人の重症化のみならず,社会での感染拡大の制御にも高い効果を発揮することが期待されています.一方で,上気道には粘液や線毛などで構成される粘膜バリアが存在しており,経鼻投与されたワクチンの体内吸収や細胞への接触を阻害するため,経鼻ワクチンによる免疫誘導を妨げる大きな障壁となっています.
本研究では,大気の乾燥などで日常的にも引き起こされるように,粘液の浸透圧が高まると,線毛を介した粘膜バリア機能が低下することに着目して,経鼻ワクチンの効果増強を目指しました.すなわち,ワクチンを高張にすることで,ワクチンが接触した粘液の浸透圧が高まり,ワクチンの上皮細胞等へのアクセスが促進されることで効果が高まると考えました.アデノウイルスベクターを用いた経鼻ワクチンモデルで研究を進めた結果,ワクチンを高張にするだけでアデノウイルスベクターの鼻腔上皮細胞への感染が促進され,免疫誘導能が大きく向上することを見出しました.本効果は,アジュバントを添加したタンパク質抗原を用いた経鼻ワクチンでも確認できました.本手法は,グリセロールなどの添加剤を加えてワクチンを高張にするだけのシンプルなものであることから,有用であると考えております.なお,本研究成果の詳細はMucosal Immunology誌(2025 18(4):793-809)に掲載されておりますので,ご参照いただけますと幸いです.
最後になりましたが,本研究の遂行に際してご指導・ご協力を賜りました東京科学大学・高山和雄先生,大阪大学・吉岡靖雄先生と,橋本壮一郎さんをはじめとした研究室の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます.

