受賞者からのコメント
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ベストポスター賞を受賞してTOPPANホールディングス株式会社 総合研究所
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この度は,日本薬物動態学会第40回年会におきまして,『An Engineered 3D Liver Tissue Model (invivoid®) for Long-Term Culture Without Medium Exchange』という演題で,ベストポスター賞という栄誉ある賞を賜り,大変光栄に存じます.審査をいただきました選考委員の先生方,ならびに日本薬物動態学会関係者各位に厚く御礼を申し上げます.
医薬品の安全性評価において,ヒトにおける肝臓での薬物代謝を的確に予測できる評価系の構築は重要な課題となっています.従来用いられてきた二次元培養法では,肝細胞の薬物代謝活性機能の維持が難しく,被験化合物の長期曝露時の挙動を十分に再現できないことが示唆されています.さらに,動物試験については,3R(代替・削減・苦痛軽減)の原則に基づき,その実施を厳格に制限・削減する動きが世界的に加速しており,New Approach Methodologies(NAMs)の活用により動物実験を代替する取り組みが加速しています.本研究では,ヒト化肝臓キメラマウス由来の初代肝細胞(PXB-cells®)を用いて構築した人工三次元肝臓組織(invivoid®)について,毛細胆管形成等の形態的特徴,遺伝子発現プロファイル,および代謝活性等の長期継続評価を行い,in vitroでの安全性評価系としての有用性を検討しました.
invivoid®は,サンドイッチ培養モデル,並びにスフェロイドモデルと比較し,薬物代謝関連遺伝子の発現が高いヒト類似性を示し,毛細胆管構造も緻密に形成されました.種々化合物を用いてスフェロイドモデルと毒性評価能を比較した試験においては,特に胆汁うっ滞性肝毒性の予測感度が高く,最大で20倍以上の感度差を示すものが確認されました.更に,2週間培地交換なしの培養条件下でも,生存率,毛細胆管構造,代謝活性は,定期的な培地交換を行った場合と同等のレベルを維持していました.この長期安定性は,FBS不含培地等の複数の培地下で同様に確認されたことから,invivoid®は培地の特徴に大きく左右されず頑健な性質を持つことが示唆されました.また,低クリアランス化合物の代表例としてcarbamazepineを長期継続曝露した事例では,GSH抱合体を経由したと推定される代謝物の生成が質量分析により検出されました.このことから,invivoid®は,長期継続曝露を必要とする多段階的な代謝動態等の幅広い代謝プロファイルを把握するツールとして有用である可能性が示されました.
最後となりますが,本研究の遂行にあたり多大なご指導を賜りました大阪大学 松崎典弥教授,日本薬科大学 山田泰弘教授に深く感謝いたします.また,共に研究を遂行しました服部光一氏,篠田 剛氏,北野史朗氏をはじめとするTOPPANホールディングス株式会社総合研究所の皆様に,心より御礼を申し上げます.

