受賞者からのコメント
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ベストポスター賞を受賞して熊本⼤学⼤学院 薬学教育部 医療情報薬学分野
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日本薬物動態学会第40回年会におきましてベストポスター賞を賜り,大変光栄に存じます.ご審査いただきました先生方ならびに学会関係者の皆様に,厚く御礼申し上げます.本稿では受賞演題である「がん悪液質における薬物動態制御因子の発現変動と副甲状腺ホルモン関連タンパク質の関与」について述べさせていただきます.
悪液質は進行がん患者の半数以上に認められる代謝異常症候群であり,生命予後不良や化学療法の中断要因となります.がん悪液質病態時にCYP基質薬のクリアランス低下が報告されていますが,その詳細な機序は未だ明らかにされていません.近年,がん悪液質の主要な誘導因子として腫瘍由来の副甲状腺ホルモン関連タンパク質(parathyroid hormone-related protein: PTHrP)が報告されました.そこで私たちは,がん細胞から分泌されるPTHrPが各CYPファミリー発現を抑制すると仮説を立て検討しました.
がん悪液質モデルラットでは血清PTHrPが上昇し,肝臓および小腸の各CYPタンパク質発現および代謝活性が有意に減少していました.さらにラット初代培養肝細胞を用いた検討では,PTHrPがCYPタンパク質発現を抑制することを確認しました.
加えて動物・細胞実験で得られたこれらの結果を,肝細胞がん患者の原発腫瘍bulk RNA-seqおよびscRNA-seq解析により検証しました.肝がん組織においてPTHrPの発現と複数のCYPの発現に負の相関が認められました.また,肝がん部組織のPTHrP発現と非がん部(健常肝)組織のCYP発現にも負の相関傾向が観察されました.さらにPTHrP陽性肝がん細胞では陰性細胞と比較して第I相・第II相薬物代謝酵素関連経路が有意に抑制されていました.以上より,がん細胞由来のPTHrPはオートクライン,またはパラクライン作用を介してCYP発現を抑制することが示唆されました.
最後に,本研究の遂行にあたりご指導を賜りました当研究室の渡邊博志教授,熊本大学薬剤学分野 丸山 徹教授,京都薬科大学薬剤学分野 前田仁志准教授,ならびに研究室の皆様に,深く感謝申し上げます.

