Newsletter Volume 38, Number 6, 2023

学会 道しるべ

顔写真:間竹 勇

2023年度(後期)若手研究者海外発表支援を受けて

名古屋市立大学大学院薬学研究科 薬物動態制御学分野
間竹 勇

 私は,2023年9月10-13日に米国マサチューセッツ州ボストンにて開催された25th NA ISSX meetingに,日本薬物動態学会の若手研究者海外発表支援を得て参加し,「FUNCTIONAL CHARACTERIZATION OF ENT2/SLC29A2 AS A URIC ACID TRANSPORTER」という題目にてポスター発表を行いました.尿酸の体内動態に関しては,その高い水溶性から生体膜透過過程においてトランスポーターの関与が知られています.そのため,尿酸の体内動態の理解のためには,尿酸トランスポーターの把握が重要ですが,尿酸産生臓器である肝臓や小腸での尿酸の血中移行に関わるトランスポーターの情報は乏しいのが現状です.この問題への取り組みとして新規尿酸トランスポーターの探索を試み,小腸や肝臓の血管膜側にあるequilibrative nucleoside transporter 2(ENT2/SLC29A2)が尿酸輸送機能を持つことを新たに見出したという研究成果の発表でした.私にとって,今回が初めての海外発表でしたが,海外研究者は,私のつたない英語によるコミュニケーションを受け入れてくれて,気兼ねなく討論を行うことが出来ました.討論を通して,研究対象のタンパク質のみに着目するのではなく,他のタンパク質との相互作用に関しても検討を行うことで,生体内における役割をより正確に把握できることを学び,自身の研究成果を見つめ直す良い機会が得られました.また,英語を扱う能力の未熟さを実感するとともに,最新の情報を世界に広めるためには,英語によるコミュニケーション能力を磨くことが不可欠であると再認識しました.

 今回のISSX meetingでは,ADC医薬品や核酸医薬品等をはじめとする近年注目を集めている新規モダリティの薬物動態に関する最新の研究情報を多く得ることが出来ました.特に印象に残っている演題は,Seattle Genetics所属のRobert Lyon先生の発表で,ADC医薬品の効果発現や副作用にリンカーが非常に重要な役割をしているという内容でした.また,多数の海外研究者の発表も見ることができ,討論もしました.どの発表も非常に素晴らしく,一つの課題に対して緻密かつ膨大な研究を積み重ね,目の前の課題に対して徹底的に追及する研究者としての姿勢を見ることが出来ました.また,普段は接する機会のない海外研究者の発表を見て,最新の研究内容だけでなく,英語を用いた発表の仕方・話し方・スライドの見せ方等に関しても幅広く学ぶことが出来ました.

 最後になりましたが,2023年度若手研究者海外発表支援事業に採用して頂き,ありがとうございました.ISSX meetingに参加し,言葉では表しきれない程の大変有意義な時間を過ごすことが出来ました.日本薬物動態学会会長の山下富義先生,国際化推進委員会委員長の中島美紀先生をはじめ,関係者の先生方に厚く御礼申し上げます.

写真

会場入口の様子
学会会場の様子
ポスター発表の様子