Newsletter Volume 35, May, 2020

日米合同薬物動態学会

写真:平林英樹

Symposium 5: Personalized Medicines for Cancer and Beyond

武田薬品工業株式会社 薬物動態学研究所
平林英樹

 個別化医療(Personalized Medicine)は,患者個々に最適な治療法を設定するために,患者側の遺伝情報などの先天的背景,生活習慣や環境因子などに起因する生理的状態,さらには疾患レベルや病状経過などを考慮して行われる医療として定義付けられています.ゲノム薬理学(Pharmacogenomics)の実用化に伴い,2000年代に入り本格化した個別化医療に関する研究は,ガン薬物療法において多大な功績を残してきました.近年では,機器分析の発展により,生物学的意義のある生体分子の定量的解析が可能になり,遺伝的情報のみならずバイオマーカーなどを指標にしたトランスレーション研究も盛んになってきています.そこで今回,個別化医療に関するシンポジウムを企画するにあたり,バイオマーカーを用いた個別化医療の最前線の研究から2演題を取り挙げます.一方,個別化医療を実現するためには,まずは疾患の生物学的理解を十分にすることから始まり,患者個々が付帯する特徴とどのように関連するかを十分な科学的論拠に基づいて解析することが重要であると考えられています.その新たなアプローチとして,市販後データを回顧的に解析することにより新たな薬物療法を提言したり,患者の生体サンプルから薬物活性を定量化することで創薬戦略にしたりといった,臨床研究側から非臨床研究戦略にフィードバックする,即ちリバーストランスレーション研究も盛んになってきています.本シンポジウムではリバーストランスレーション研究領域からも2題取り挙げます.

 本シンポジウムの座長は,米国Pfizer社の山崎慎司先生と,僭越ながら私,武田薬品 平林英樹という企業からの二人で務めさせて頂きます.上述の領域でご活躍されている4名の先生方をお招きして貴重なご講演を頂戴しながら,我々座長の企業視点を交えて個別化医療とその基盤を担いつつあるトランスレーション研究の現状と展望をご参加の皆様と議論できれば幸いでございます.非臨床から臨床まで,医薬品開発とその薬物療法に携わられている多くの方々のご参加をお待ちしております.

Symposium 5: Personalized Medicines for Cancer and Beyond

Co-Chairs: Hideki Hirabayashi, Takeda Pharmaceuticals, Tokyo, Japan and Shinji Yamazaki of Pfizer Inc., San Diego, California, USA

  • Lecture Title to be Confirmed
    Yoshimasa Saito, Keio University, Tokyo, Japan
  • Lecture Title to be Confirmed
    Akihiro Hisaka, Chiba University, Chiba, Japan
  • Advances in ADME Biomarker & Liquid Biopsy Approaches to Support Clinical Drug Interaction Assessment & Subject Phenotyping
    A. David Rodrigues, Pfizer, Inc., Groton, Connecticut, USA
  • Translation of Pharmacokinetics and Exposure-response Relationships from Non-clinical Data to Patients – Learnings from the AstraZeneca Oncology Portfolio
    Dermot McGinnity, AztraZeneca, Cambridge, United Kingdom