Newsletter Volume 35, May, 2020

日米合同薬物動態学会

写真:斎藤嘉朗

Symposium 3: Biological Therapeutics

国立医薬品食品衛生研究所
斎藤嘉朗

 抗体医薬品は,今や低分子医薬品とならんで開発の主流となっている.しかし,チトクロムP450酵素やトランスポーターの基質になるわけでもなく,また分布も標的臓器の他は血液が主であり,薬物動態の研究対象としては面白みに欠けるとの認識がある.しかし,免疫原性評価における抗薬物抗体の分析系構築など,その特性に基づいた独自の課題があると共に,抗体医薬品に関してもTherapeutic drug monitoring(TDM)が有用であるという知見も増えてきている.また最近では抗体薬物複合体におけるペイロード(低分子化合物部分)の代謝・動態など新しい研究課題もでてきている.さらには,炎症性疾患に用いられるバイオ医薬品に関して,その効果によるチトクロムP450酵素の発現抑制又はその解除など,体系的に整理すべき課題も知られている.加えて,バイオ医薬品に関しても,薬物速度論モデルの構築が求められている.薬物動態研究者が貢献すべき課題は多い.

 本シンポジウムでは,カットポイントの設定等の抗薬物抗体測定における技術的要点整理及び構築測定系のヒト臨床研究における応用,新しい測定法を用いた抗体医薬品のTDMや抗体医薬品のヒト血中における糖鎖構造変化の解析,Fc fusionタンパク質に関する標的分子を介する医薬品分布についてのPK/PDモデル構築とそのヒト試験結果との整合性,LC-MS/MSを用いた抗体薬物複合体の新規測定法開発,等で顕著な成果を有する演者からご講演をいただく.

 これら課題に関する研究は,本邦でも行われているものの,年会ではなかなか取り上げられていない.今回の合同年会という貴重な機会に,日米の第一線の研究者4名より,バイオ医薬品の薬物動態上の課題とその方向性について,ご講演をいただく予定である.企業,アカデミア,行政関係の研究者,さらには将来企業や病院へ就職を希望される学生など,多様な皆様のご参加をお待ちする.

Symposium 3: Biological Therapeutics

Co-Chairs: Yoshiro Saito, National Institute of Health Sciences, Kawasaki, Japan, and Aaron Moss, Certara, Seattle, Washington, USA

  • Critial Issues in Immunogenicity Assessment of Biological Therapeutics
    Akiko Ishii-Watabe, National Institute of Health Sciences, Kawasaki, Japan
  • TDM and Clinical Pharmacology of Therapeutic Antibodies
    Atsushi Yonezawa, Kyoto University, Kyoto, Japan
  • PKPD Considerations of Complex Biologics
    Aaron Moss, Certara, Seattle, Washington, USA
  • Biologics Assay Development
    Russell Sanderson, Alpine Immune Sciences, Seattle, Washington, USA