Newsletter Volume 33, Number 6, 2018

学会 道しるべ

写真:池上孝明

平成30年度若手研究者海外発表支援を受けて

熊本大学 薬学部 薬剤学分野
池上孝明

2018 International Meeting on 22nd MDO and 33rd JSSX
(10月1日~5日,金沢市)

写真:発表したポスターと著者

 私は2018年10月1日から5日に金沢市で開催された2018 International Meeting on 22nd MDO and 33rd JSSX (日本薬物動態学会第33回年会/MDO国際合同年会)に参加し,「Parathyroid hormone-related protein secreted from cancer tissues contributes to the downregulation of CYP3A」というテーマでポスター発表をしてきました.ポスターセッションには日本だけでなく,海外からも若い研究者が参加していました.我々の研究室ではシトクロムP450(P450)の研究を行っている者が少なかったのですが,本学会では多くがP450に関する研究なだけあってとても興味深いものが多く,動態分野の同世代の学生がどのような研究をしているのかを知るよい機会となりました.また,Parathyroid hormone-related proteinに関することなど,基本的なことももちろん質問されましたが,今までほとんど質問を受けることがなかったCYP3Aの発現調節に関わる核内受容体に関するご質問・ご助言をいただき,自分の研究に対する位置づけや理解が深まり,研究へのモチベーションとなりました.また,初めての国際学会に参加させていただいたということで緊張しました.海外の研究者の発表を初めて聞き,自分のリスニング能力が不足していたことを自覚し,英語を読んで理解する能力だけでなく,相手の英語を聞いて瞬時に理解するリスニング能力も同時に身につけなければいけないと痛感しました.

 自身の発表以外にも,様々な講演を聴きました.それらの中で,金沢大学病院薬剤部の崔 吉道先生の「Effect of obesity on inter-individual variation of drug metabolism」が印象に残りました.私は現在,がん悪液質のときに薬物代謝が変動する機序を研究しています.崔先生のご発表は肥満に関するものでしたが,がん悪液質と同様の変化を示している検査値はないだろうか,あった場合のPKの変化はどうなっているかなど,自身の研究と結び付けて機序について考察しました.

 今回,外国語の発表を聞くことの難しさと世界で行われている研究の幅広さを感じました.このような経験は国際学会に参加し,発表しなければ知ることができなかったことです.私の場合はたまたま,日本での国際学会でしたが,2年後はアメリカのハワイでISSXと合同で学会が開催される予定なので動態学会員の皆さまはぜひ参加されてください.一生ものの経験ができると思います.

 最後になりましたが,一般社団法人日本薬物動態学会平成30年度若手研究者海外発表支援事業より学会参加支援をしていただいたおかげで貴重な体験をすることができました.心よりお礼申し上げます.ありがとうございました.