Newsletter Volume 33, Number 6, 2018

学会 道しるべ

写真:望月達貴

2018 MDO/JSSX in Kanazawaに参加して

東京大学大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室
望月達貴

 

 この度,「Investigation of SLC35F2 drug transport function in mouse brain and primate BBB models」という題目で,平成30年度若手研究者海外発表支援事業に採択いただき,大変光栄に存じます.今回の発表では,血液脳関門(BBB)における新規薬物輸送担体を同定することを目的としてorphan transporter SLC35F2に着目し,本タンパク質がヒトおよびサルのBBBモデル細胞において薬物取り込みに関与することを明らかにしました.

 今回私は,ポスター発表に加えてSY-10 Frontier science of transporter research based on innovative ideas においてselected oral presentationも行わせていただきました.どちらの発表とも大変多くの先生方からのご意見・ご質問を頂戴いたしましたが,中でもPlenary Lectureを行っていただいたMatthias Hediger先生から頂いた,SLC35F2の細胞内局在及び相同性の高いファミリーとの機能や局在の類似性についてのご質問は,今後の研究方針を立てる上で非常に注目すべき点であると感じました.Hediger先生はこれまで数多くのorphan transporterの機能を明らかされてきた方であり,そのような方のお考えを垣間見させていただけたのは非常に有意義でした.

写真:望月達貴(左)と中村吉伸(右)
ポスター発表の様子
(著者(左)および金沢大学 中村吉伸先生(右))

 本年会で,他研究者の発表として興味深かったものを挙げさせていただきます.ポスター発表では金沢大学 中村吉伸先生の「The role of Oatp2a1/Slco2a1 in macrophages in PGE2 disposition in the hypothalamus during fever」です.本研究ではOatp2a1のPGE2輸送能と発熱の関係性をOatp2a1全身ノックアウトマウス並びに単球およびマクロファージ特異的ノックアウトマウスを使って詳細に解析されていました.トランスポーターの機能・局在と生理学的機能を結び付けて研究されているという点で,自分自身が目指す研究の形を体現されていると感じました.また,口頭発表におきましては,私がオーガナイザーの一人として開催いたしました学生主催シンポジウムPRIS2018で発表された名古屋市立大学 山下美紗季先生の「Compounds X enhance BBB properties in brain microvascular endothelial cells derived from hiPSCs」が非常に興味深い発表でした.本研究ではヒトiPS細胞由来の脳毛細血管内皮細胞(hiPS-BMECs)のtight junction形成能や薬物輸送能といった性質をより向上させる化合物の同定をなさっていました.本研究で使用しているhiPS-BMECsは,私の研究でも使用しておりまして,本細胞の性能向上は当研究室でも取り組んでいる課題であることから,本研究で使用されていた評価系の情報は非常に有益だと感じました.

写真:Speaker席に立つ著者
PRIS2018でのOpening remark

 先述のように,私は本年会において学生主催シンポジウムPRIS2018をオーガナイズさせていただきました.本シンポジウムは日本薬物動態学会で唯一の若手研究者や学生を中心とした会合です.このような若手研究者の発表および交流の機会を年会以外の場でもより多く作っていくことが,将来の薬物動態学の発展につながっていくものと考えております.

 最後になりましたが,一般社団法人日本薬物動態学会平成30年度若手研究者海外発表支援事業より学会参加支援をして頂いたお陰でこのような貴重な体験をすることが出来ました.心より感謝しております.ありがとうございました.