Newsletter Volume 41, Number 1, 2026

受賞者からのコメント

顔写真:深田翔太

ベストオーラル賞を受賞して

北里大学 薬剤学教室
深田翔太

 この度,日本薬物動態学会第40回年会において,ベストオーラル賞を賜り大変光栄に存じます.本大会の開催にあたりご尽力いただきました大会長の山下富義先生をはじめ,ご審査いただきました選考委員の先生方,日本薬物動態学会関係者の皆様に心より御礼申し上げます.

 本大会では,「Quantitative evaluation of the cell-surface mucin layer thickness in gobletcell-enriched human intestinal epithelial cells for assessment of drug-induced gastrointestinal toxicity」という演題名にて発表を行いました.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は優れた抗炎症・鎮痛作用を有する一方で,用量依存的な消化管毒性を引き起こすことが知られています.このような消化管毒性に対して,臨床では粘膜保護薬が併用されることも多いものの,その毒性および有効性を適切に評価可能なin vitro評価系は十分に確立されていません.

 腸管上皮表面を覆うムチン層は,杯細胞から分泌されるMUC2を主成分とし,消化管防御において極めて重要な役割を果たしています.本研究では,ヒト小腸クリプト由来腸管上皮細胞を用い,in vitro実験系においてムチン層を直接取り扱い,その厚さを指標とした新規消化管毒性評価系の構築を目的としました.

 分化誘導した腸管上皮細胞にNSAIDsを曝露した結果,MUC2遺伝子発現レベルおよびムチン層厚は用量依存的に低下し,さらにアスピリン併用条件ではその低下が増強されました.これらの結果は,臨床で報告されている薬物間相互作用による消化管リスクの増大を反映するものであり,本評価系の予測性を示すものと考えられました.また,培養条件の最適化によりムチン層を安定して形成可能な単層培養系を確立し,粘膜保護薬の効果評価への応用可能性も示しました.本研究は,in vitro系においてムチンという消化管防御の本質的要素を定量的指標として取り入れた点に特徴があり,薬物誘導性消化管毒性の新たな評価アプローチとして有用であると考えています.

 思い返せば,2024年に開催された26th NAISSX / 39th JSSXに参加した際,英語でのコミュニケーションの難しさを痛感しました.その経験を踏まえ,自身の成長のためにも英語での口頭発表に挑戦したいと考え,本大会に臨みました.京都という伝統と革新が調和する地において,多くの研究者の方々と活発な議論や交流ができたことは,大変貴重な経験となりました.まだまだ研究者としては未熟であり,学ぶべきことも多いと感じています.本大会での経験を糧に,今後も一つ一つの研究に真摯に向き合いながら,さらなる成長を目指して取り組んでいきたいと考えています.次回,第41回年会が開催されるつくばの地において,皆様と再びお会いできることを楽しみにしております.