Newsletter Volume 41, Number 1, 2026

受賞者からのコメント

顔写真:田久保弘章

ベストポスター賞を受賞して

日本たばこ産業株式会社(現 塩野義製薬株式会社) 薬物動態研究所
田久保弘章

 この度は,「Utilization of endogenous biomarker 4β-hydroxycholesterol for quantitative prediction of CYP3A induction-mediated drug-drug interactions」という演題でベストポスター賞という名誉ある賞をいただきまして誠にありがとうございます.審査いただきました選考委員の先生方,ならびに日本薬物動態学会関係者の皆様に厚く御礼申し上げます.

 CYP3Aは多くの医薬品の代謝に関わることから,その薬物相互作用(Drug-Drug Interaction: DDI)リスクを早期に把握することは非常に重要です.DDI試験に関するガイドラインでは,DDIリスクを把握する新たな手段の一つとしてバイオマーカーアプローチを挙げています.しかし,CYP3A誘導のバイオマーカーとして知られる血漿中4β-ヒドロキシコレステロール/コレステロール比(4β-HC/C)について,判断基準などの具体的な記載はありません.また,4β-HC/Cは消化管のCYP3A活性を反映しないとの報告や,CYP3A活性のマーカーとして十分に検証されていないとの報告もあります.そこで本研究では,ガイドラインにも記載されている静的薬物速度論(mechanistic static pharmacokinetics,MSPK)モデルを用いて,4β-HC/Cの増加比からCYP3A誘導によるDDIの予測法を検討しました.CYP3A誘導薬を反復経口投与したヒトにおける血漿中4β-HCまたは4β-HC/Cの増加比,in vitro誘導パラメータおよび誘導薬の肝細胞中濃度をMSPKモデルの肝臓の項に代入し,スケーリングファクターであるd値を算出しました.算出したd値,基質薬のCYP3Aによる代謝寄与率,小腸アベイラビリティ,誘導薬の肝細胞および腸管上皮細胞中濃度をMSPKモデルに代入し,併用投与したCYP3A基質薬のAUCR(誘導薬の存在下及び非存在下における基質薬のAUC比)を予測しました.7誘導薬および18基質薬を用いて基質薬のAUCRの予測精度を検証した結果,実測値の2倍以内に約84%が予測されました.また,レトロスペクティブ解析を行った社内2化合物でも,基質薬のAUCRは実測値の2倍以内に予測され,良好な結果が得られました.これらの結果から,本手法は,臨床段階の早期にDDIリスクを把握するための有用な手段となることが示されました.今後,DDIリスクの早期把握に向けて,様々なバイオマーカーの利用が促進されることを期待しています.最後になりましたが,本研究を遂行する上で多大なるご協力をいただきました日本たばこ産業株式会社薬物動態研究所の皆様と,研究生活を支えてくれている家族に,この場を借りて心より感謝申し上げます.