Newsletter Volume 41, Number 1, 2026

受賞者からのコメント

顔写真:田原優成

ベストポスター賞を受賞して

金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 創薬科学専攻 薬物代謝安全性学研究室
田原優成

 この度,日本薬物動態学会第40回年会におきまして「Protective role of protoporphyrin IX in acetaminophen-induced liver injury via suppression of ferroptosis」という演題でベストポスター賞を賜り,大変光栄に存じます.ご審査いただいた先生方をはじめ,有意義な議論を交わしていただいた皆様に心より御礼申し上げます.

 フェロトーシスは,二価鉄(Fe2+)に依存した脂質過酸化により引き起こされる細胞死であり,様々な疾患や医薬品の副作用に関与することが報告されています.近年,アセトアミノフェン(Acetaminophen: APAP)誘導性肝障害においてもフェロトーシスの関与が示されましたが,Fe2+の上昇を引き起こす根本的な機序は未だ解明されておりません.そこで本研究では,Fe2+の上昇を抑制する因子として,Fe2+を取り込んでヘムに変換されるプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX: PpIX)に着目しました.本研究の目的は,APAP誘導性肝障害におけるFe2+上昇にPpIX量が関与するか,さらにPpIX前駆体である5-アミノレブリン酸(5-Amino Levulinic Acid: 5-ALA)の投与がAPAP誘導肝障害に対して保護効果を示すかを明らかにすることでした.マウスにおいて,APAP腹腔内投与後,肝臓中のPpIX合成律速酵素および代謝酵素の発現に変化が認められなかったにも関わらず,PpIX量が低下していたことから,PpIXがFe2+の取り込みに消費されていることが示唆されました.PpIX量の低下に伴い,時間依存的にFe2+の増加および肝障害の悪化が認められたことから,肝臓における早期のPpIX低下がAPAP誘導性肝障害を増悪させている可能性が示されました.これを検証するため,APAP投与前に5-ALAを投与して肝臓中PpIX量を高く維持したところ,Fe2+の上昇および肝障害が顕著に抑制されたことから,PpIXの早期低下がAPAP誘導性肝障害の増悪を促進することが示されました.さらに,APAP投与後に5-ALAを投与した場合でもフェロトーシス抑制を介して肝障害が軽減されたことから,治療的介入としても有用であることが示唆されました.

 最後になりますが,本研究の遂行に際してご指導を賜りました深見達基先生,中島美紀先生,藤野智恵里先生に厚く御礼申し上げます.