Newsletter Volume 41, Number 1, 2026

受賞者からのコメント

顔写真:國枝美里

ベストポスター賞を受賞して

東京薬科大学 薬物動態制御学教室
國枝美里

 この度は,日本薬物動態学会第40回年会におきまして,「Functional identification of MCT7 as a novel drug resistance transporter in breast cancer cells」という演題で,ベストポスター賞という栄誉ある賞を賜り大変光栄に思います.ご審査いただきました先生方,ならびに日本薬物動態学会関係者各位に厚く御礼申し上げます.

 モノカルボン酸トランスポーター7(MCT7)は,乳酸を含むモノカルボン酸の排出輸送に関わる輸送体ファミリーに属するトランスポーターです.MCT7はヒトの脳や肝臓等の正常組織だけでなく,乳がんや悪性黒色腫等のがん組織にも高発現し,一部の抗がん薬に耐性化したヒト卵巣がん細胞において,その発現の亢進が報告されています.しかし,乳がん細胞におけるMCT7の病態生理学的役割および薬剤耐性への寄与は明らかになっていません.そこで本研究では,ドキシサイクリン誘導性にMCT7を発現するヒト乳がん由来MCF-7細胞を樹立し,MCT7の抗がん剤耐性への寄与および新規薬物トランスポーターとしての機能を評価しました.

 本研究を通して,methotrexate(MTX)およびpemetrexed(PMX)の細胞増殖抑制作用はMCT7の発現誘導によって顕著に減弱し,乳がん細胞におけるMCT7の発現が抗がん剤耐性に寄与することを明らかにしました.また,MCT7はMTXおよびPMXをpH依存的かつ低親和性に輸送し,新規薬物トランスポーターとして機能することを明らかにしました.さらに,抗がん剤耐性のメカニズムとして,MCT7はMTX,PMXおよび内因性L-glutamateの排出トランスポーターとして機能することが示唆されました.

 最後になりましたが,本研究の遂行にあたり,ご指導いただきました東京薬科大学 薬物動態制御学教室の井上勝央教授,岸本久直講師,齊藤直希助手,大学院生,学部学生の皆様,東邦大学 薬物動態学教室の樋口 慧准教授にこの場を借りて御礼申し上げます.