Newsletter Volume 40, Number 6, 2025

Newsletter Volume 40, Number 6, 2025

はじめに

 今年も残すところ,あとわずかとなりました.皆様にとって,本年はどのような一年でしたでしょうか.私は病院薬剤師として業務にあたる中で,「2025年問題」を強く意識するようになりました.団塊の世代が後期高齢者となり,医療・介護ニーズが急増する一方で,多職種すべてにおいて人員確保は容易ではありません.そのような中で,限られた資源で有害事象を減らし,治療効果を最大化することが,これまで以上に求められていると感じております.その実現に向けては,薬物動態学に基づく適切な用量・投与設計などを通じて,患者一人ひとりの薬物治療を最適化していくことが,重要な役割を果たすと考えております.本ニュースレターが,基礎・臨床の研究者の皆さまや産業界の皆さまとともに,その役割と可能性をあらためて議論するきっかけとなりましたら幸いです.引き続きのご愛読を賜りますよう,何卒よろしくお願い申し上げます.(T.H.)

 

トピックス

薬物動態学会ニュースレター発:レギュラトリーサイエンス情報

 ガイドライン及びICHでの規制調和活動の最新動向など,薬物動態領域に関わるレギュラトリーサイエンス情報について,ニュースレター委員会より報告します.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

 

動態研究に取り組むNEW POWER

「見えないものを見る」 薬物動態研究で見える景色

小野薬品工業株式会社 薬物動態安全性研究部
バイオDMPK・システムズ薬理グループ
大津誠太郎

 皆さま初めまして.小野薬品工業株式会社,薬物動態安全性研究部の大津誠太郎と申します.この度は日本薬物動態学会ニュースレターへの貴重な執筆の機会を頂き,編集委員の先生方をはじめ関係者の方々に厚く御礼申し上げます.

 「見えないものを見る」──この言葉は,私が研究において追求しているテーマであり,ワクワクする気持ちの源泉となっています.顕微鏡を覗き込み,微細な世界の秘密を解き明かす時や,遺産や建造物に触れ,過去の歴史をたどる時,未知の世界を探求し,わからないことを理解することは,私にとって常に心躍るものです.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

 

今さら聞けない改変抗体の体内動態研究

第2回:FcRn結合増強改変抗体

中外製薬株式会社 研究本部 バイオ医薬研究部 DMPKG
山田駿介
原谷健太

 こんにちは!前回は「抗体の薬物動態の基礎」についてお届けしました.第2回は,「FcRn結合増強改変抗体」について紹介します.本稿では,FcRn結合増強改変による半減期延長の研究の歴史,カニクイザルとヒトにおける半減期延長効果の事例,動物モデルからヒトにおける抗体の薬物動態を予測する方法を述べたいと思います.

 抗体は約150kDaの高分子であるために糸球体濾過を受けにくい事,またFcRn(neonatal Fc receptor)介在性のリサイクリング機構を有しているために長い半減期を示す事が知られています.抗体は,血管内皮細胞などに取り込まれた後,酸性環境下であるエンドソーム中でFcRnと結合します.この結合により,ライソソームへの輸送を回避し,タンパク質分解酵素による分解から保護されます.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

 

受賞者からのコメント

創薬貢献・奨励賞を受賞して

中外製薬株式会社 トランスレーショナルリサーチ本部
永易美穂

 このたび日本薬物動態学会より創薬貢献・奨励賞という栄誉ある賞を賜り,心より感謝申し上げます.日本薬物動態学会長 加藤将夫先生,選考委員の先生方,ならびに本賞にご推薦くださいました中外製薬株式会社 研究本部 齋藤良一博士に深く御礼申し上げます.

 私はこれまで抗体医薬を中心とした非臨床薬物動態研究に従事してまいりました.誠に僭越ながら,以下に私の研究「新規抗体評価プラットフォームの開発および次世代抗体医薬品創製への貢献」についてご紹介させていただきます.・・・(続きはNLホームページへ

 

創薬貢献・奨励賞を受賞して

武田薬品工業株式会社 薬物動態研究所
中山美有

 この度は,『新規医療モダリティの生体内分布評価基盤の構築』という研究題目で,日本薬物動態学会創薬貢献・奨励賞を賜りました.このような大変栄誉ある賞をいただき光栄に存じます.選考委員の先生方,ならびに日本薬物動態学会関係者各位,そして本賞にご推薦いただいた山本俊輔氏(現中外製薬株式会社)に厚く御礼申し上げます.

 近年の目覚ましい科学技術の進展に伴い,“医療モダリティ”は,低分子医薬だけでなく,生物学的製剤をはじめ,核酸医薬や遺伝子治療薬,細胞治療薬へと多様化しています.しかしながら,新規医療モダリティに対しては,薬物動態評価基盤が確立されておらず,体内動態特性についても未だ解明されていない状況です.本研究では,上述の課題を解決すべく,以下に述べる3つの生体内分布評価基盤を新たに確立し,新規医療モダリティの創生を促進させました.・・・(続きはNLホームページへ

 

奨励賞を受賞して

長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科(薬学系)
向井英史

 この度,「PETを基盤としたニューモダリティの薬物動態研究と画像診断薬・DDS開発への展開」という題目で奨励賞を賜りました.大変光栄であると同時に,身が引き締まる思いです.ご推薦いただきました長崎大学大学院教授の川上 茂先生をはじめ,多くのご指導を賜りました,京都大学特定教授・名誉教授の橋田 充先生,理化学研究所名誉研究員(神戸大学大学院特命教授,大阪公立大学名誉教授)の渡辺恭良先生に深謝いたしております.また,選考委員やご関係の先生方に深くお礼申し上げます.以下,私の進めて参りました研究について,簡単ではありますが紹介させていただきます.・・・(続きはNLホームページへ

 

創薬貢献・北川賞を受賞して

株式会社ティー・エヌ・テクノス CTO/CRO事業本部
平林英樹

 この度,「新規医薬品の創製における薬物動態学の先進的応用に関する研究」という題目で,日本薬物動態学会 創薬貢献・北川賞という名誉ある賞をいただくことができました.このような大きな賞を賜ることができたのは,これまで私を支えてくださった皆さまのおかげであり,ただただ感謝の気持ちでいっぱいです.本賞の推薦にご尽力くださった元アステラス製薬の田端健司先生をはじめ,講演座長を引き受けてくださった日本薬物動態学会会長・加藤将夫先生,理事会や選考委員会の先生方,そして諸先生方に心より御礼申し上げます.また,これまで一緒に研究に取り組んできた,藤沢薬品工業株式会社,アステラス製薬株式会社および武田薬品工業株式会社の仲間たちへも深い感謝の意をお伝えしたいと思います.・・・(続きはNLホームページへ