Newsletter Volume 37, Number 4, 2022

Newsletter Volume 37, Number 4, 2022

はじめに

 暑い日が続いており,蝉の声も一層勢いを増しておりますが,夏休みとなりテレワーク中に時折元気いっぱいの子供の声が聞こえてきますと,夏の盛りを感じることができます.今年も残暑は厳しいかと思いますので,皆様,熱中症にはくれぐれもお気を付けください.

 さて,持続可能な開発目標(SDGs)については,教育の現場でも積極的に取り上げられているようで,子供と議論する機会も増え,地球温暖化問題も体感される昨今では,広く意識されるようになってきたと感じます.海外ではコロナ禍で観光客が激減した半面,海の環境が改善し,アフターコロナにおいては,観光客へのインセンティブと引き換えに,海の保全活動に参画してもらい,観光と環境を両立するビジネスモデルが積極的に活用されているそうです.子供と海に出かけることがありますので,日本での取り組みを調べてみますと,これまでのインバウンド需要で課題となっていた環境への付加を軽減しようと,サステナブル・ツーリズムが注目され,旅行者の意識も高まっているそうです.美しい自然を守りつつ,みんなが持続的に発展できるニューノーマルな未来への取り組みが確かに始まっているようです.今秋の横浜での年会では,ニューノーマルを実践しつつ,薬物動態研究の未来を感じながら,参加者の皆様と活発に議論・交流できるノーマルを存分に楽しみたいと思っています.第7波のコロナ感染が続いており,早期の収束を願うばかりですが,未来へのわくわく感を忘れずに,暑い夏を乗り切りたいと思います.(K.I.)

特集記事のご紹介

トピックス

 新規発見や手法の開発など学問の発展に伴い,医薬品等の研究開発から市販後の評価項目やその手法は絶えず進化しています.それに呼応して,日米欧の規制当局およびICH等からの規制情報も随時更新されています.ここでは,医薬品開発に用いる最新の技術・知見,医薬品審査の規制情報及びそれらに関連する情報のトピックスを紹介していきます.本記事を通じて,会員各位の業務に有効にお役立ていただければ幸いです.

細胞治療製品の研究開発における薬物動態研究入門

 細胞治療は,生きた細胞を患者へ投与もしくは移植することで細胞・組織・臓器の機能を改変・修復する革新的な治療です.細胞治療製品の研究開発では,血液中細胞濃度を経時的に評価する細胞動態(cellular kinetics: CK)評価や, 組織への移行を評価する生体内分布(biodistribution: BD)評価が行われます.細胞治療製品は,低分子化合物や抗体医薬,核酸医薬などとは性質が大きく異なるため,薬物動態評価の際には従来の常識に捕らわれずに試験デザインやデータ解釈を行う必要があります.本記事では,細胞治療製品のCKやBD評価のための分析法,CK/BD評価時に実験者が陥りやすい落とし穴,細胞治療製品のCKやBDの基本的特性及びCK/BD解析時のモデリング&シミュレーションの有用性等について,複数回に渡り紹介していきます.

若手が取り組む動態研究

 これからの薬物動態研究を支える若手研究者に御登場いただき,最新の研究内容を紹介していただくコーナーです.薬物動態学は絶えず進化しており,薬の動きを研究する学問から,新たな方向に広がっていることを感じます.本コーナーを通して,これからの薬物動態学の潮流を創り出す若手研究者の最新の研究動向を伝えます.若手研究者の斬新なアイデアや研究パワーを実感いただけることでしょう.