Newsletter Volume 35, Number 6, 2020

Newsletter Volume 35, Number 6, 2020

はじめに

 2020年も残すところ,あとわずかとなりました.皆様にとって,本年はどのような一年でしたでしょうか.今年ほど,変わり続けることを求められた年はなかったのではないかと思います.薬剤師旋風を巻き起こし話題となったあのドラマ,薬剤部長が新人薬剤師にわかる~と共感する姿は,昨今変わりつつある理想の上司と部下,教員と学生との関係を象徴しているかのようでした.私も,変わらなければ.

 いまもなお世界的な広がりを見せる新型コロナウィルス感染は,一瞬にして人類の脅威と化し,これまでの私たちの日常の多くは,1年も経たずして非日常に変わりました.本年4月の緊急事態宣言以降,大学では,対面授業からWEBでの遠隔授業へ移行し,研究室は,実験の一時中断やシフト制の導入などでワークスタイルの変更を余儀なくされました.閑散とした研究室で,今後の行く末にひとり思いを巡らし,途方にくれたこともありました.しかし,人類には,これまでもこのような予期せぬ環境の変化によって,むしろ進化を遂げてきた歴史があります.来るべきオリンピックイヤー2021年は,開発が進む新型コロナワクチンが感染拡大の猛威から人類を救い,ウィズコロナ・ポストコロナのもとで,すっかり変わった平穏な日常(New Normal)を享受できることを願っています.

 シンギュラリティ(特異点)という言葉を御存じでしょうか.人工知能(AI)が人知を超える転換点,または,それによって人間の生活に大きな変化がもたらされるという概念をいうそうです.われらが薬物動態学におけるシンギュラリティは,いつどのように到来するでしょうか.こんな時だからこそ,大切なものを見失わないようにしつつ,変化を受け入れて進化を遂げたいものです.(MT)

特集記事のご紹介

企業で活きる薬物動態の基礎講座(ニュースレター編)

 このコーナーは日本薬物動態学会第34回年会にて好評を得た「企業で活きる薬物動態の基礎講座」のセッションでご発表いただいた平林英樹先生および貝原徳紀先生に誌上にてその内容を再構成していただいたものです.特に創薬現場での薬物動態研究で必要な知識,技術,考え方を分かりやすく解説する講座として設けました.基礎的な内容であればあるほど,なかなか人には聞きにくいものであり,本で調べても記載していないことも多々あります.企業研究者だけでなく,これから企業での薬物動態研究を目指す学生にとっても貴重な情報になると思われます.ご期待ください.