Newsletter Volume 33, Number 2, 2018

Newsletter Volume 33, Number 2, 2018

はじめに

 新年度に入ってから1ヵ月が経ち,暖かい日が続くようになってきました.新年度を迎え,学生から社会人になったり,又は異なる所属に移ったりすることで,新しい環境での生活をスタートされた会員の方もおられることと思いますが,益々ご活躍されることを期待しております.

 最初にNewsletter(NL)の中で用いる専門用語及びそれらの略称について,ここで触れておきたいと思います.NLでは,薬物動態をはじめとする各研究分野で用いられる専門用語・略称が多く使われます.NLの編集を行う過程で,専門用語・略称の使い方について,NL編集委員の間で議論を交わしました.今回,話題になったのは「シトクロムP450」の略称として用いられる「P450」と「CYP」です.結論として,NLでは「シトクロムP450」の略称として「P450」の使用を推奨することとしました.これは,ISSX等の国際学会での用語説明などにおいて「P450」がシトクロムP450の略称として用いられている一方で,「CYP」はシトクロムP450の分子種を表す際の接頭語(例:CYP3A4)として用いられるのが一般的であるためです.薬物動態学会の会員が薬物動態分野の専門用語・略称をどのように用いているかということは,学会内外を問わず,大きな影響力を持つと考えます.したがって,学会の会員誌であるNLでは,より厳格な使い方をする必要があると考え,このような決断をするに至りました.専門用語・略称の使い方については,これ以外の用語を含め,様々な考え方があることと思います.多くの会員の方からご意見を賜り,必要に応じて,専門用語・略称の使い方について,NLとしての整理を根拠とともに発信していきたいと考えています.

 さて,本号では「トピックス」に2報ご寄稿いただきました.一つは第32回年会においてPMx-1 DISによって企画されたシンポジウム「Oncology領域におけるQSP approachの適用事例と課題」のオーガナイザー,座長及び演者の先生方に「QSP in Oncology」をご執筆いただきました.もう一つは,日本製薬工業協会医薬評価委員会基礎研究部会からの「製薬企業が考える薬物動態」(4回シリーズ)で,第1回目を日本たばこ産業株式会社の倉橋良一先生に「非臨床薬物動態試験の経緯とその意義」をご執筆いただきました.また,第32回年会にて好評を得た学会活性化委員会の「企業で活きる薬物動態の基礎講座」でご発表いただいた橘 達彦先生及び平林秀樹先生に,それぞれのご講演内容を再構成した内容をご寄稿いただきました.今号から3回のシリーズとなります.「学会 道しるべ」では,第32回年会で行われた第3回学生主催シンポジウムについて,オーガナイザーを務められた長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の徳永彩子先生及び名古屋市立大学薬学研究科の小野里太智先生からご寄稿いただきました.また,技術・研究材料紹介(企業広告)を株式会社ケー・エー・シーの海老澤 栞先生からご寄稿いただき,「SILENSOMES™」についてご紹介いただいています.いずれも読みごたえのある内容です.どうぞお楽しみください.

特集記事のご紹介

トピックス

 新規発見や手法の開発など学問の発展に伴い,医薬品等の研究開発から市販後の評価項目やその手法は絶えず進化しています.それに呼応して,日米欧の規制当局およびICH等からの規制情報も随時更新されています.ここでは,医薬品開発に用いる最新の技術・知見、医薬品審査の規制情報及びそれらに関連する情報のトピックスを紹介していきます.本記事を通じて,会員各位の業務に有効にお役立ていただければ幸いです.

企業で活きる薬物動態の基礎講座(ニュースレター編)

 このコーナーは日本薬物動態学会第32回年会にて好評を得た学会活性化委員会「企業で活きる薬物動態の基礎講座」のセッションでご発表いただいた橘 達彦,加藤基浩および平林英樹の各先生方に誌上にてその内容を再構成していただいたものです.特に創薬現場での薬物動態研究で必要な知識や技術を分かりやすく解説する講座として設けました.基礎的な内容であればあるほど,なかなか人には聞きにくいものであり,本で調べても記載していないことも多々あります.企業研究者だけでなく,これから企業での薬物動態研究を目指す学生にとっても貴重な情報になると思われます.ご期待ください.

学会 道しるべ

 「学会 道しるべ」では,薬物動態という枠組みにとらわれず,日本薬物動態学会の会員にとって役に立つと思われる学術集会を取り上げ,それらの予告または集会の内容や雰囲気などを報告していただくことを目的としています.薬物動態研究者は,産学のいずれにおいても,単なる薬物の動態の枠組みを超えて,薬効評価や病態解析など多方面において活躍されていることと思います.そのような状況の中で,会員諸氏にとって役に立つような学術集会を紹介できるコーナーを目指しています.会員のみなさまから興味のある学術集会についての情報をお知らせいただければ,このコーナーで取り上げるつもりですので,ぜひお寄せください.

技術・研究材料紹介(企業広告)

 このコーナーは,薬物動態研究の技術や研究材料を提供する企業から広告として紹介いただきます.新たな技術や製品情報に接することにより,研究がより効率よく進むことを期待して設けました.