Newsletter Volume 33, Number 5, 2018

学会 道しるべ

The 2nd Workshop
for Korea-Japan Young Scientists on Pharmaceutics
開催報告

 去る2018年7月10日,11日の2日間にわたり,ソウル淑明女子大学校(Sookmyung Women’s University)にてThe 2nd Workshop for Korea-Japan Young Scientists on Pharmaceutics(第2回韓日若手薬剤学研究者ワークショップ)が開催された.本ワークショップは,次世代の薬剤学を担う若手研究者の国際競争力の強化と研究モチベーションの向上を目指し,英語による発表・議論・コミュニケーションの機会を設けることを目的に,日本および韓国の関連学会が主体となって綿密に準備が進められてきた.実質的な運営は,主催機関である創剤フォーラムと共催機関である日本薬剤学会(APSTJ),日本薬物動態学会(JSSX),韓国薬剤学会(KSPST)および韓国バイオデリバリー学会(BTDS)に所属する以下の各構成員が担当した.

大会長:Jin-Seok Kim,(Sookmyung Women’s University:KSPST)
副大会長:白坂善之(東京薬科大学:日本薬物動態学会)
世話人:

  • Hwa Jeong Lee(Ewha Womans University:BTDS)
  • Hyukjin Lee(Ewha Womans University:BTDS)
  • Jin-Wook Yoo(Busan National University: KSPST)
  • Wooin Lee(Seoul National University: KSPST)
  • Jun-Bom Park(Sahmyook University: KSPST)
  • Dong Yun Lee(Hanyang University: BTDS)
  • Jong-Hyuk Sung(Yonsei University: KSPST)
  • JiHoon Jeong(Sungyunkwan University: BTDS)
  • Dae Hwan Shin(Chungbuk National University: BTDS)
  • Eun Hee Lee(Korea University: KSPST)
  • 深水啓朗(明治薬科大学:日本薬剤学会)
  • 樋口ゆり子(京都大学:日本薬剤学会)
  • 中西猛夫(金沢大学:日本薬物動態学会)
  • 小柳 悟(九州大学:日本薬物動態学会)
アドバイザー:

  • Dae-Duk Kim(Seoul National University: KSPST)
  • Seung Jin Lee(Ewha Womans University: BTDS)
  • Beom-Jin Lee(Ajou University: KSPST)
  • 山下伸二(摂南大学:創薬フォーラム)
オブザーバー:

  • Sung-Joo Hwang(Yonsei University: KSPST)
  • Yong-Hee Kim(Hanyang University: BTDS)
  • Jaehwi Lee(Chung-Ang University: KSPST)
  • Seong Hoon Jeong(Dongguk University: KSPST)
  • 尾関哲也(名古屋市立大学:日本薬剤学会)
  • 楠原洋之(東京大学:日本薬物動態学会)

 本ワークショップは,韓国薬剤学会会長Dae-Duk Kim先生のご挨拶を皮切りに,2日間の長く,熱い討論がスタートした.初日は,臨床腫瘍学者であるYaungro Byun先生から,血中アルブミンとの結合を利用した体内滞留時間の長いプロドラッグを用いて腫瘍をターゲットする画期的なDDSの開発についての基調講演があった.とても穏やかな語り口でわかりやすい講演は,DDSや製剤学の分野で活躍する研究者ばかりでなく生物薬剤学を専門とする者にもしっかりと内容が伝わってきた.また,2日目の基調講演では熊本大学の今井輝子先生より,カルボキシルエステラーゼを有効に活用するDDSの歴史と最新の知見が披露された.最後に,女性研究者に夢をあきらめずに研究を続けることについて,今井先生が送られたメッセージは聴衆の心に響くものがあった.

 シンポジウムは「Nanobiotechnology」,「DMPK」,「Drug Delivery」,「Formulation」の4セッションが企画され,オーガナイザーは本ワークショップの世話人が担当した.いずれのセッションも日本2名,韓国2名の若手研究者によって構成し,各演者からは最新の研究成果が紹介され,活発な討論が行われた.

 一般演題(ポスター発表)には,昨年から15題増えて,89題のエントリーがあり,発表者は英語による示説を行った.エントリーされた演題から10演題を「Chair’s Selection Award」として表彰し,英語によるショートプレゼンテーションを行っていただいた.また,今回の初めての企画として,Chair’s Selection Award受賞者によるセッションの座長を日韓それぞれから選ばれた優秀な若手研究者に担当いただき,活発な討論が行われた.これとは別に英語によるポスター示説で高い評価を受けた6名の演者を「Best Poster Award」として表彰した.

 本ワークショップでは,研究者間のコミュニケーションの円滑化をはかるため,ワークショップ会場内ホールでの親睦会も企画された.参加者が学生主体の若手研究者であったことから,ビュッフェ形式のBanquetには和気藹々たる雰囲気が作られていた.Wooin Lee先生らの司会進行で,予め世話人が用意したウイットに富んだクイズ(日韓の参加者や所属に纏わるクイズ)が読み上げられ,会場全員が一体となって賞品争奪に躍起になった.誤答した解答者には,会場からの「マッコリ」コールが浴びせられる一幕も.お互いの友情とほど良い緊張感でとても盛り上がった.Banquet後は,場所を市中のお店に移して,有志での二次会,さらには三次会と続き,シニアも若手も時間を気にすることなく親睦を深め,深夜に及ぶまで英語によるコミュニケーションを図れたのではないかと思う.

 今回は第二回の開催だったとはいえ,韓国での開催ということもあり,大会の開催時期や,周知,さらには賛助などで厳しい側面も少なからずあったが,最終的には日本と韓国の大学や企業から総勢178名もの研究者・学生参加者を得ることができ,上述のとおり本ワークショップは成功裏に終了した.大会長を務められたJin-Seok Kim先生のご尽力に深く感謝するとともに,多大なご支援をいただいた創薬フォーラム,日本薬剤学会,日本薬物動態学会,韓国薬剤学会,韓国バイオデリバリー学会および製薬メーカー各社の皆様に厚く御礼申し上げます.

 急速に進む研究活動のグローバル化により,若手研究者や学生が海外の学会で発表する機会も増えつつあるが,本ワークショップは英語によるプレゼンテーションを行うのみならず,将来花開くであろう研究の素地として,海外の研究者・学生とコミュニケーションおよびネットワークを構築することを強く志向している点で,他の学会活動や研究活動とは大きく異なる.とりわけ,若手研究者や学生にとってこれまでに経験したことのない貴重な機会となっていることは,参加した者だけが実感できる紛れもない事実である.今回参加できなかった皆さんには,若手・学生であるか否かに関わらず,次回の参加を強く勧めたい.第3回日韓若手薬剤学研究者ワークショップは,2019年7月10日(水)-11日(木)に東京で開催予定である.前回(京都)と今回(ソウル)での開催により醸成されつつある本シンポジウムならではの雰囲気と日韓の友好を途絶えさせることなく,次回の開催では若手研究者・学生のより積極的な参加と盛会に期待したい.本シンポジウムが,日韓薬剤学分野の未来を担う若手研究者の架け橋となることを心から願うばかりである.