Newsletter Volume 30, Number 1, 2015

展望

 宮内 優

19th North American ISSX/29th JSSX meeting における Pre-Doctoral Poster Awards を受賞して

九州大学大学院薬学府分子衛生薬学分野
宮内 優

 この度,19th North American ISSX/29th JSSX meeting において,栄誉ある Pre-Doctoral Poster Awards を頂き誠にありがとうございました.年会長の寺崎先生をはじめ,ポスター賞選考委員の先生方に心から御礼申し上げます.

 私は,学部四年次の卒業研究以来,シトクロム P450 3A4 (CYP3A4) と UDP-グルクロン酸転移酵素 2B7 (UGT2B7) の機能的相互作用について研究しています.所属研究室では CYP3A4 が UGT2B7 のモルヒネ抱合活性における位置選択性を変化させることを報告していましたが,その逆向きの影響について検討することが私の研究テーマになりました.P450 の中でも重要分子種の一つである CYP3A4 に関する研究に従事できるとあって,当時夢中で発現系の構築を行ったことを覚えています.今振り返るとたいしたことではないのですが,調製したミクロゾームで P450 の CO 結合差スペクトルが観察できたときと,ミクロゾームを酵素源に CYP3A4 活性が確認できたときは,まだ六年弱の研究生活において一番感動した瞬間でした.共発現系を用いた検討から,UGT2B7 が CYP3A4 活性を抑制することが示唆されました.この抑制作用は,UGT と同じ膜位相を有するカルネキシンでは確認されなかったことから,UGT2B7 に特異的なものであると考えられます.また,UGT2B7 に様々な変異を導入することで,この CYP3A4 に対する抑制的な相互作用は UGT2B7 の C 末端における膜貫通領域の疎水性アミノ酸残基と内腔側の膜結合領域が協調的に作用して生じることも見出しています.

 今回は北米 ISSX との合同学会とあって,例年に増して拙い英語力を高めようと必死になりました.先生方のご指導のおかげで,何とか発表を乗り切ることができましたが,もう少し上手く説明が出来たら…と悔しい気持ちも残りました.この気持ちをバネに,今後は語学にも一層力を入れていきたいと思います.私にとっては初めてのアメリカでしたが,大変良い経験をさせていただきました.

 最後になりますが,本研究を行うに際し,終始熱心なご指導・ご鞭撻を賜りました当研究室の山田英之教授,石井祐次准教授,並びに日頃より研究生活を充実したものにしてくださる研究室メンバーの皆さんに深く感謝いたします.今回いただいた賞を励みに,今後も質の高い研究を行っていきたいと思います.