ごあいさつ

日本薬物動態学会第21回年会 年会長
三共(株)薬剤動態研究所 
池田敏彦
ikeda


年会テーマ:技術革新と国際化に即応する創薬および薬物動態研究の推進

万有引力の法則について,ある人の感慨のこもった次の文章を思い出します。

「引力が距離の二乗に逆比例していることは本当に幸運なことである。もし,正比例しているのであったら,自分達の世界はより遠くにある,目に見えない物によってより強く影響され,到底まともな生活はできないのだから」。

確かに,遠くに逃げることによって距離をとり,安全を確保できることは幸いです。しかし,最近の世の中の情勢を見ていると、地球上の遥か遠い所で起こった事象の影響が,もう次の日には自分達の周囲に及んできていることを実感します。現在では信号の伝播速度は桁違いに速くなっています。とうとう地球の直径は,影響の及ばないほどの遠い距離ではなくなってしまいました。この認識と覚悟が「グローバリゼーション」と言う言葉に集約されています。政治,経済,科学,スポーツ,芸能など全ての分野がその道を歩んでいると言えます。就中,科学においては,どの科学雑誌に発表された小さな事実でも,内容が重要である限りたちまちにして全世界を席捲します。創薬に限らず科学的事実に基づいて何かを創り出して行く分野では,地球上のどの地点から発信される情報でも広くアンテナを広げて受信し続けることが求められます。

 上記の背景をもとに本年会では,前回の年会(辻 彰年会長)と同様,講演要旨を全て英語と致します。また,アジア・太平洋地域の国際薬物動態学会(ISSX)の会員との合同シンポジウムも開催することに致しました。ISSX会員が日本薬物動態学会(JSSX)の年会を自分達の情報発信の場の1つと捉えて,気軽に参加できる雰囲気が醸成されることを期待するものです。このことにより,JSSX会員が居ながらにして世界の情報を収集できることにも繋がります。

本年会ではいくつかのシンポジウムについて公募制を採用しました。従ってシンポジウムの内容が会員の要望に木目細かく対応するものになることが期待されます。更には杉山雄一会長の方針の1つである,若手研究者の育成と言う観点から「若手研究者シンポジウム」も本年会からスタートすることになりました。ただし,これに参加して発言することには年齢制限はありません。多くの皆様の積極的な参加と若手研究者の刺激になるコメントを頂きたいと存じます。年会最後に行われるフォーラムでもFDAEMEAの動向を察知し,我が国において積極的な対応を探る道が模索されることになっています。また,言うまでもなく,著名な研究者を招待しての特別講演やランチョンセミナーおよび機器展示も例年のごとく行います。

ベストポスター賞(BP賞)の選考方法も本年会から変わります。まず,BP賞選考委員会が,BP賞に応募された講演要旨の中から採点表に従って最終選考候補者(Finalist)を1015人選出します。ファイナリストには専用の掲示場を用意し,会期を通じてポスターを掲示して頂きます。また,ファイナリストに選ばれたことの証書を授与し、懇親会にも無料招待します。会期中にBP賞選考委員会による最終選考を行い,フォーラム開催前の表彰式にて3位までの入賞者を表彰する予定です。皆様には奮ってBP賞に応募されますよう希望致します。

年会は薬物動態学に関わる研究者が一堂に会してFace to Faceで議論し,情報交換ができる唯一の場です。是非ともJSSX会員の皆様にはこの機会を有効に活用頂きますようお願い申し上げます。