Newsletter Volume 41, Number 4, 2026

学会 道しるべ

顔写真:岸本久直

The 47th Annual Meeting of PTSTに参加して

東京薬科大学 薬学部 薬物動態制御学教室
岸本久直

 2026年5月13-15日,タイ・バンコクのプラモンクットクラオ病院において,「Global Trends and Emerging Innovations in Pharmacology」をテーマとしたThe 47th Annual Meeting of The Pharmacological and Therapeutic Society of Thailand (PTST) が開催されました.私は今回,JSSXとPTST(タイ薬理学会)の共同プロジェクトからの招待講演者として参加する機会をいただきました.私にとってこれが初の海外招待講演であり,大変光栄であると同時に,JSSXを代表する立場として身の引き締まる思いで参加しました.

 本学会は,タイ全土(バンコクをはじめ,北部,北東部,東部,南部)から11の主要大学,計28学部が参加しており,タイ国内の薬理学関連分野の研究者が一堂に会する,非常に活気あふれる学会でした.会場となったプラモンクットクラオ病院は,由緒ある王立陸軍病院であり,敷地内にはラーマ5世によって建設された歴史的建造物であるパヤタイ宮殿(Phya Thai Palace)が併設されるなど,歴史的な趣と近代的な医療施設が調和した印象的な環境でした.総参加者数は126名で,そのうち28名が現地大学の大学院生であったことが特に印象に残りました.学会全体としては比較的コンパクトな規模でしたが,招待講演を含む口頭発表が10件,ポスター発表が約20件行われ,学生や若手研究者から教授陣まで,会場の至る所で活発な議論が交わされていました.また,14件の企業展示も行われており,産学双方の参加者が交流する和やかな雰囲気も感じられました.

 私は大会期間中,「The Role of the Mucus Layer in Pharmacokinetics and Pharmacological Effects, and Its Molecular Basis.」というタイトルで,60分(講演約45分+質疑応答約15分)の講演を行いました.初めての海外招待講演であり,さらに長時間にわたる英語での講演を成功させるためには,入念な準備が不可欠でした.講演では,これまでの自身の研究成果を単に紹介するだけでなく,「粘液層」やその主要構成成分である「ムチン(mucin)」に関する基礎的な内容から,なぜ薬物吸収研究において粘液層に着目する必要があるのか,その背景から創薬への応用,さらには将来展望までを一つのストーリーとして構築しました.発表資料の視認性や時間配分はもちろん,専門外の研究者にも理解しやすい表現を心掛けるなど,直前まで試行錯誤を重ねました.この準備の過程は,私自身の研究を客観的に見つめ直す貴重な時間となりました.講演中は,多くの参加者が熱心に耳を傾けてくださる様子が伝わり,私自身も自然と熱のこもった講演を行うことができました.講演後の質疑応答では,フロアから鋭く,かつ建設的な質問を多数いただきました.「多様なモダリティの吸収における粘液層の影響をどのように評価すべきか」「特定の疾患モデルにおいて粘液層の変化をどのように捉えるべきか」など,実践的な質問が多く,タイの研究者の皆様の関心の高さを肌で感じることができました.また講演の最後には,本年度のJSSX年会ならびに,私たち東京薬科大学 薬物動態制御学教室が運営を担当する次年度のJSSX年会についても紹介し,参加を呼びかけました.この講演をきっかけに,タイからも多くの研究者にJSSX年会へ参加していただき,国際的な交流がさらに活発になることを期待しています.国境を越えた学術交流の醍醐味を存分に実感するとともに,大きな達成感を得て講演を終えることができました.

 今回の滞在を通じて,現地の先生方や参加者の皆様に温かく迎えていただきました.この経験から,この関係を一度限りの講演や相互訪問にとどめるのではなく,JSSXとPTSTの共同プロジェクトを通じて,共同研究の立ち上げや,タイの優秀な若手研究者が日本で学ぶ機会の創出など,より多角的かつ持続的な連携へと発展させていくことが重要であると感じました.

 最後になりますが,このような大変貴重な挑戦の機会を与えてくださった,日本薬物動態学会会長の楠原洋之先生,国際化推進委員会委員長の前田和哉先生をはじめ,関係者の先生方に,この場を借りて厚く御礼申し上げます.今回の経験を大きな糧として,今後の自身の研究を一層発展させるとともに,アジア,さらには世界の薬物動態研究の発展に微力ながら貢献できるよう,今後も一層精進してまいります.

 

以上.

講演中の写真1 講演中の写真2 会場の様子の写真