動態研究に取り組むNEW POWER
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道半ばの薬物動態研究者として:データと人に学ぶ日々大塚製薬株式会社 徳島創薬研究センター 前臨床研究所 薬物動態研究部
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はじめに
大塚製薬株式会社の柴田昌和と申します.このたびは貴重な執筆の機会をいただき,ニュースレター編集委員の先生方に厚く御礼申し上げます.京都薬科大学大学院修士課程を修了後,同社に入社し,薬物動態研究に16年間従事しております.現在はプロジェクトを担当し,薬物動態評価,ヒト薬物動態予測,Modeling & Simulationなどに取り組んでいます.これまでの経験を振り返り,薬物動態研究への取り組みと今後の目標について紹介させていただきます.
薬物動態研究との出会いと基礎の形成
私の薬物動態研究の出発点は大学時代にあります.当時は,in vivoで病態モデルを作製しながら,動物を用いた薬物動態評価を中心に研究していました.薬物投与後の血中濃度推移から体内で何が起きているのかを考える過程に面白さを感じ,薬物動態分野に惹かれていきました. 一方で,同社に入社した当初は,創薬研究の全体像も実験の進め方も十分に理解できておらず,「自分が研究職としてやっていけるのだろうか」と不安に感じていました.恥ずかしながら,当時の私が確実にできることといえば,「元気に挨拶をすること」と「分からないことは先輩方に納得できるまで聞くこと」,そしてなぜか「食事会や飲み会の幹事を引き受けること」や「お誘いいただいた場合はほぼ出席すること」などに力を入れていました.今思えば,“勢いと,少々のしつこさ”で職場に存在感を示していたのかもしれません(現在は環境の変化により当時のようにはいかない面もありますが,その姿勢は今でも大切にしたいと考えています).
そのような中で,創薬・開発段階にある複数の低分子プロジェクトに薬物動態担当として関わる機会をいただきました.先輩方に指導いただきながら,動態データの取得に加え,その実施意義や解釈,ドキュメント作成などについても一つずつ学び,薬物動態評価が創薬から申請まで広く関わる領域であることを実感しました.また,自社内で必要な非臨床試験が一通り実施できる体制があり,そうした環境の中で幅広い試験やデータに触れることができたことも,大きな学びにつながったと感じています.さらに,こうした経験の中で,いくつかの論文投稿に関わらせていただく機会もありました.
研究テーマとヒト薬物動態予測への展開
私にとって大きな転機の一つは,抗結核薬デラマニドに関する研究です.デラマニドはCYPやUGT等の主要な薬物代謝酵素ではなく,アルブミンによって代謝される特徴を有しており,その動態特性評価や代謝機構の解明に関わらせていただきました1)-4).試行錯誤の中で期待した結果が得られたときの達成感は,今でも印象に残っています.さらに,アルブミン代謝という特性を踏まえたヒトPKの予測に取り組みました.デラマニドのアルブミン代謝に基づく全身クリアランス(CL)の予測について試行錯誤を重ねた結果,全身のアルブミン量を考慮したスケーリングにより,ヒトCLを比較的良好に予測できる可能性が示されました.得られたパラメータを用いて生理学的薬物動態(Physiologically Based Pharmacokinetic: PBPK)モデルを構築し,薬効の考察にもつながりました5).この経験を通じて,実験データとモデル解析を結びつける重要性を学びました.これらの研究成果をまとめる中で,論文博士として学位を取得することができました.
また,非臨床段階におけるヒト薬物動態予測にも取り組み,自社データを用いた振り返り解析を行いながら,CLや分布容積(Vd)を中心としたパラメータ予測手法やPBPKモデル構築方法の整理を進めました.あわせて社内における予測時の基本方針の整備を行い,現在はプロジェクトにおけるヒトPK予測の基盤として活用しています.
これらの過程では臨床薬理部門の方々に多大なサポートをいただきました.その経験を通じて,非臨床段階においても臨床を意識することの重要性をより強く実感しました.そのうえで,臨床の視点と非臨床の知見をバランスよく活かしながら,プロジェクトに貢献していくことの重要性も感じています.
視野の広がりと現在の取り組み
ヒトPK予測やModeling & Simulationに取り組む中で,解析結果をどのように伝えるかの難しさも感じるようになりました.スライドが複雑になりすぎることもあり,「何が言えるのか」「意思決定にどう関係するのか」「不確実性はどこか」を意識し,シンプルに整理することの重要性を実感しています.
また,製薬協などの活動を通じて社外の方々と議論し,学ばせていただく機会も増え,考え方や意思決定の違いに触れる中で,自身の視野が広がることを感じています.
さらに,マネジメントやメンターとしてメンバーと関わる機会も増えてきました.人と関わる難しさを感じる一方で,周囲との議論ややり取りを通じて,自身の理解を見直す機会にもなっています.
加えて,機械学習やAIの活用についても学びを進めています6), 7).また,多様化する創薬モダリティ(抗体,抗体薬物複合体,核酸など)についても,薬物動態や解析の観点からプロジェクトに貢献できるよう取り組んでいます.まだ試行錯誤の段階ではありますが,今後も理解を深めていきたいと考えています.さらに,グローバルでの協業の機会も増えている中で,適切に貢献できるよう取り組んでいきたいと考えています.
おわりに
これまでを振り返ると,多くの方々との出会いと支えに恵まれてきました.かつては「分からないことをしつこく聞く側」でしたが,今後は「しつこく聞かれても一緒に考える側」として貢献できるよう努めていきたいと思います.
まだ道半ばではありますが,初心を忘れず前向きに研究に取り組み,創薬と薬物動態分野に貢献していきたいと考えています.今後は,より広い視点の中で,自身の専門性の活かし方を模索していきたいと思います.
これまでご指導・ご支援いただいた先生方,先輩方,同僚の皆様に心より感謝申し上げますとともに,今後ともご指導ご鞭撻のほど,どうぞよろしくお願いいたします.

