Newsletter Volume 38, Number 3, 2023

Newsletter Volume 38, Number 3, 2023

はじめに

 いよいよ夏本番.1年の折り返し地点です.私たちの生活を一変させた新型コロナウイルス感染症は,5月に季節性インフルエンザと同じ5類感染症へと移行しました.猛威を振るった新型コロナウイルスの動態は,過去の歴史と同じように人類との共存という形で新たな定常状態に入ったといえるでしょう.ウイズコロナのもと,今年こそはとはりきって,夏休みの計画を立てている方もいらっしゃるでしょうか.

 さて話は変わりますが,昨今「質の低下」が叫ばれています.研究の質,教員の質,学生の質,新入社員の質,はたまた現代人の筋肉の質までさまざまです.社会のデジタル化が進み,科学技術が発展する中で,これほどまでに質の低下が取りざたされているのは,なぜなのでしょうか.もしかしたら現代人が,自らがつくりあげたテクノロジーに追い抜かれる変曲点を示す現象なのかもしれません.一方で,漠然としていますが,このような急速な環境の変化は,現代人の進化の引き金ともなるでしょう.大切なものを守りつつ,変化にアンテナを張って,大好きな薬物動態学のシン化に貢献したいものです.

 とある会議に出席したとき,薬物動態学ってどういうサイエンスなのですか?と聞かれたことがあります.生化学か,分子生物学か,物理化学か,数学か,酵素学か,膜輸送学か,分析化学か,再生医学か,コンピュータサイエンスか.本年9月に開催される日本薬物動態学会第38回年会/第23回シトクロムP450国際会議国際合同大会は,「ライフサイエンスと創薬における新たな知と技の発見~過去に学び,未来を知る~」のテーマのもと,魅力ある講演やシンポジウムが企画されています.この大会で,シン・薬物動態学の新たなサイエンスを見つけてこようと思います.(M・T)

 

トピックス

大会長インタビュー:2023年ICCP450/JSSX国際合同大会(静岡)の「見どころ・聞きどころ」

静岡県立大学薬学部衛生分子毒性学分野 吉成浩一
鳥取大学大学院工学研究科化学・生物応用工学専攻 永野真吾

 第23回シトクロムP450国際会議との国際合同大会となる,第38回日本薬物動態学会(JSSX)年会.吉成・永野大会長に合同大会のアピールポイントなどについて伺い,動画にまとめました.この合同大会は例年とどこが違うのか,年会の概要を把握し,大会長の意気込みもお感じください.・・・(動画はNLホームページへ

動態研究に取り組むNEW POWER

薬物動態研究を実臨床で活用するために

和歌山県立医科大学薬学部医療薬剤学研究室 山田孝明

 この度,日本薬物動態学会ニュースレターに寄稿する機会を頂きました山田孝明と申します.このような貴重な機会を与えてくださいました編集委員の先生方に厚く御礼申し上げます.私は,長崎大学大学院修士課程を修了後,九州大学病院薬剤部にて17年間病院薬剤師として勤務しておりました.2023年4月より和歌山県立医科大学薬学部に異動し,大学教員として新たな道を歩み始めたところです.せっかくの機会ですので,これまでの略歴や経験してきたことを含めて,私が取り組んできました薬物動態研究の内容と,今後の目標について紹介させて頂きたいと思います.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

細胞治療製品の研究開発における薬物動態研究入門

第五回:細胞治療製品のモデリング&シミュレーション(M&S);増殖する薬物CAR-T細胞のM&Sやヒト予測はどう行う?

武田薬品工業株式会社 リサーチ 薬物動態研究所
後藤昭彦,山本俊輔,中山美有,守屋 優

 こんにちは!シリーズでお届けしてきた「細胞治療薬品の研究開発における薬物動態入門」もいよいよ最終回になってしまいました.これまで分析法概要や注意すべき落とし穴,細胞動態(CK)や生体内分布(BD)の実例を紹介してきました.最終回はこれまで紹介してきました分析法で創出されたCK/BDデータを用いたmodel解析について紹介したいと思います.細胞治療製品のmodel解析の実例は,ほぼ全てがキメラ受容体発現T細胞(chimeric antigen receptor T cell, CAR-T細胞)を初めとする免疫細胞の事例のため,本編でもCAR-T細胞の例を紹介します.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

技術・研究材料紹介(企業広告)

環状ペプチドの簡便かつ高感度な定量化ソリューション

株式会社エービー・サイエックス

 環状ペプチドは複雑な3次構造から,高いベースライン干渉とCID(衝突誘起解離)によるフラグメンテーション化が難しく高感度定量が難しい化合物となります.本テクニカルノートでは,ラット血漿中の環状ペプチドEptifibatideの高感度定量ワークフローについて,ZenoTOF7600システムのZeno SIM, Zeno CID, Zeno EAD(Electron Activated Dissociation)モードによる定量を評価いたしました.・・・(続きはNLホームページへ