Newsletter Volume 41, Number 2, 2026
はじめに
2026年は,冬季オリンピック,野球のワールドベースボールクラシック及びサッカーのワールドカップとスポーツの国際大会が目白押しです.2月に開催されたミラノ・コルティナオリンピックの氷雪の舞台で,日本勢が冬季五輪史上最多となるメダルを獲得したことは,多くの研究者にとっても大きな勇気となりました.その裏側では,選手個人の努力に加え,科学と技術が競技力を支えていることが改めて注目されています.モーグル競技では,日本の企業が開発したスキー板が世界のトップ選手に選ばれ,メダル獲得を支えたという報道もあり,日本のものづくりと科学的アプローチが世界最高峰の舞台で評価されていることを実感させられます.創薬研究,とりわけ薬物動態学も同様に,見えない部分で成果を左右する「基盤の力」が問われる分野です.本号では,改変抗体というニューモダリティの体内動態を基礎から整理するとともに,MPSという最新研究基盤が創薬・開発研究をどのように進化させるのかを紹介します.日本の技術力と研究者の挑戦が,次のスタンダードを生み出す,そんな期待を胸に,ぜひ本特集をご覧ください.
今さら聞けない改変抗体の体内動態研究
第3回:リサイクリング抗体及びスイーピング抗体
中外製薬株式会社 研究本部 バイオ医薬研究部 DMPKG
原谷健太
今さら聞けない改変抗体の体内動態研究シリーズの第3回は,リサイクリング抗体およびスイーピング抗体について,薬物動態研究を含めてご紹介します.第1回でも触れたように,抗体の薬物動態は標的抗原の影響を受ける場合があり,Target-mediated drug disposition(TMDD)と呼ばれる非線形な消失を示すことがあります.TMDDを示す抗体の代表例として,日本初の抗体医薬品であるトシリズマブが挙げられます.トシリズマブはインターロイキン6(IL-6)受容体に対する抗体で,関節リウマチをはじめ複数疾患で承認されています.IL-6受容体に結合したトシリズマブは細胞内に内在化し,エンドソームを経てライソソームへ移行し分解されると考えられています.このため,低投与量では血漿中からの消失が速く,投与量増加に伴いIL-6受容体が飽和し,消失が緩やかになります.つまり,トシリズマブはIL-6受容体に一度しか結合できないため,受容体量に対して同等量以上の抗体投与が必要となります.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用)
創薬・開発研究を支える最新の研究基盤
Microphysiological systems(MPS)
第3回:Microphysiological systemsの課題と挑戦
アステラス製薬株式会社 トランスレーショナル&バイオメディカル サイエンス
渋田真結
皆様,こんにちは!本シリーズ『創薬・開発研究を支える最新の研究基盤』では,microphysiological systems(MPS)について全3回で取り上げております.第一回にてMPSの定義や特徴について,第二回では創薬研究における活用事例についてご紹介してきました(未読の方はぜひ過去の記事もご参照ください).最終回となる本稿では,MPSを活用する上で直面する主な課題と,それに対する最新の解決アプローチを紹介します.薬剤の作用を検出する適切なリードアウトの取得や再現性が高い評価系の構築,スループット性の向上は,MPSを創薬研究に取り入れる上で重要な要素です.これらに関する課題と取り組み事例を知ることで,読者の皆様が自らの研究にMPSを効果的に導入する一助となれば幸いです.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用)
