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日本薬物動態学会 第31回年会
NEWSLETTER Volume 31, Number 4, 2016
ニュースレター編集委員会より

 子供たちが夏休みに入るとほぼ同時に,日本でも「ポケモンGO」の配信がはじまりました.屋内でゲームに夢中になっている子供(大人も?)を屋外に連れ出す効果と引き換えに,「歩きスマホ」等の問題は避けられませんが,「拡張現実(AR:Augmented Reality)」をゲームに取り入れたことは注目に値します.

 さて,本号の紹介です.「アドメサークル組織編」は金沢大学の玉井郁巳先生より第2回目をご寄稿いただきました.「NEW FACE - NEW POWER」は大日本住友製薬の林 瞬先生より,第3回目となる「企業で活きる薬物動態の基礎講座」は,成富洋一先生からnon-P450で代謝される化合物のヒトPK予測,平林英樹先生からはコンパートメントモデルを使った解析方法についてお話しいただきます.「トピックス(秦 武久先生)」,「学会道しるべ(九州大学 小柳 悟先生,金沢大学 中西猛夫先生)」,「技術の窓(千葉大学 関根秀一先生)」,「技術・研究材料紹介(コーニングインターナショナル)」と今号も話題が盛りだくさんです.

 10月13日(木)よりキッセイ文化ホール(松本市)を主会場に開催されます日本薬物動態学会第31回年会のご案内もございます.どうぞお楽しみください.

【展望】

  • 第31回年会のご案内「薬物動態研究が切り拓く創薬と薬物治療の新機軸」 年会長 大森 栄(信州大学医学部附属病院薬剤部)

【ご案内】

  • 日本薬物動態学会 ニュースレター(NL)WEB会員について

【トピックス】

  • 「ガイドライン最新情報とトピックス(42)」 有限会社レギュラトリーサイエンス研究所 秦 武久

【NEW FACE - NEW POWER】

  • 「薬物動態学の創薬への貢献のあり方」 大日本住友製薬株式会社 前臨床研究所 林 瞬

【アドメサークル】

  • アドメサークル組織編(その2) 金沢大学医薬保健研究域薬学系薬物動態学研究室 玉井郁巳

【学会 道しるべ】

  • The 1st Workshop for Japan-Korea Young Scientists on Pharmaceutics - 九州大学大学院 薬学研究院 小柳 悟,金沢大学医薬保健研究域・薬学系 中西猛夫

【企業で活きる薬物動態の基礎講座(ニュースレター編)】

  • 創薬研究者のための薬物代謝学入門-発想のポイントと未来の方向性を考える(5回シリーズ その3) アステラス製薬株式会社 薬物動態研究所 成富洋一
  • いまさら聞けない薬物動態学の基礎-薬物動態の"罠"に陥らないための学習のコツ(5回シリーズ その3) 武田薬品工業株式会社 平林英樹

【技術の窓】

  • サンドイッチ培養肝細胞を用いた薬物性胆汁うっ滞型肝障害発症リスク予測法 千葉大学大学院 薬学研究院 生物薬剤学研究室 関根秀一

【DMPK 31(4)に掲載された各論文の「著者から読者へのメッセージ」】

  • 日本人健康成人を対象としたプラスグレルの薬物動態学的および薬力学的検討
  • 再発性性器ヘルペスの治療開発のためのAmenamevir (ASP2151)の統合的な薬物動態-薬力学モデリングとシミュレーション

【技術・研究材料紹介(企業広告)】

  • 新たなラインナップ:動物Oatp1b系とヒトOATP1B1変異型 コーニングインターナショナル株式会社 ライフサイエンス事業部 和田格人
展望

日本薬物動態学会 第31回年会
薬物動態研究が切り拓く創薬と薬物治療の新機軸

年会長 大森 栄(信州大学医学部附属病院薬剤部)

 この度,日本薬物動態学会第31回年会を2016年10月13日(木)から15日(土)の3日間,長野県松本市のキッセイ文化ホールを主会場として開催させていただくことになりました.新規医薬品の薬物動態情報は,非臨床研究,臨床研究どちらからのものでありましても,至適薬物療法を求めていく上で重要なものであります.近年は,これまで主であった,低分子化合物から中分子,高分子化合物が新規医薬品としてターゲティングされており,薬物動態研究もこれらの変化に伴い新たな問題点が出てきております.・・・(続きは年会のホームページへ

ご案内

日本薬物動態学会 ニュースレター(NL)WEB会員について

 本学会非会員で,NLメールマガジンの配信を希望された方に,NL WEB会員としてメールマガジンの送信を始めました.NL WEB会員は,DMPKに掲載された各論文の「著者から読者へのメッセージ」と「技術・研究材料紹介(企業広告)」の全文を読むことができます.本学会に入会することにより,2011年創刊以来の全ての記事の全文を読むことが可能となります.

 本学会に入会を希望される場合は,以下のサイトから会員手続ができます.

会員手続:http://www.jssx.org/jimu/nyuukai/

トピックス

ガイドライン最新情報とトピックス(42)
有限会社レギュラトリーサイエンス研究所 秦 武久

 新規医薬品の承認コストは増大しており,その原因は今も昔も同じで,その一つとして開発候補品のドロップ数の増大が考えられ,そのドロップの原因も無数である.

 バイオマーカーを早期の段階で包括的に開発戦略に取り込むことにより,ドロップを軽減でき,開発の成功率をかなり高められることが明らかになりつつある.

 POCを含む臨床試験での失敗は,"wrong target","wrong molecule","wrong outcome"及び"wrong patient"によるところが大きく,従って,バイオマーカーを取り入れた戦略がますます重要になってくる.

 バイオマーカーは,"predictive biomarker","pharmacodynamics biomarkers","progonostic biomarkers" 及び "surrogate biomarkers" のタイプがあるが,その戦略に最も適したバイオマーカーを適用することにより,失敗を防ぐことはできないが,失敗のリスクを軽減することが出来る.・・・(続きはNLホームページへ

NEW FACE - NEW POWER
写真:林 瞬 薬物動態学の創薬への貢献のあり方
大日本住友製薬株式会社
前臨床研究所
林 瞬

 私は入社以来,薬物動態研究に従事させていただき今年で6年目になります.その間にいくつかのプロジェクトに携わる仕事や基盤研究をさせていただきました.つたない経験ではありますがそこから得た私なりの薬物動態学の創薬への貢献のあり方について"ヒト体内動態予測","薬物動態学の特徴"という2つのトピックで書かせていただきます.・・・(続きはNLホームページへ

アドメサークル
写真:玉井郁巳 アドメサークル組織編(その2)
金沢大学医薬保健研究域薬学系薬物動態学研究室
玉井郁巳

 山窓会に流れる研究のモットーは,新しい概念を提唱できるオリジナル性の高い研究をめざそうというものです.1980年に製剤学教室の教授に就任した辻 彰先生は,その考え方を「教科書をぬりかえる研究」という言葉で表現しました.・・・(続きはNLホームページへ

学会 道しるべ
The 1st Workshop for Japan-Korea Young Scientists on Pharmaceutics
写真:小柳 悟 九州大学大学院
薬学研究院
小柳 悟
写真:中西猛夫 金沢大学
医薬保健研究域・薬学系
中西猛夫

 2016年6月24日,25日の2日間にわたり,The 1st Workshop for Japan-Korea Young Scientists on Pharmaceutics(第1回日韓若手薬剤学研究者ワークショップ)が,京都教育文化センターで開催された.本ワークショップの開催経緯についてであるが,創剤フォーラムにおいて「我が国における医薬品開発の国際競争力を底上げするため,国際的に活躍する人材を育成すること」が課題として抽出され,研究力や研究者の英語力,地理的条件を考慮し,韓国の薬剤学系学会をパートナーとして薬剤学領域の若手研究者が海外の研究者と共同で企画・運営,英語での講演・討論,コミュニケーションをはかる場を設けることとなった.本計画は,将来的にアジア・オセアニア地域へ拡張し,薬剤学研究者のネットワークを形成することを想定している.

 日本薬物動態学会でも,国際化は重要な活動の1つであり,これまでに年会の完全英語化,ISSXとの合同年会の企画を実現している.・・・(続きはNLホームページへ

企業で活きる薬物動態の基礎講座(ニュースレター編)
写真:成富洋一 創薬研究者のための薬物代謝学入門-発想のポイントと未来の方向性を考える(5回シリーズ その3)
アステラス製薬株式会社 薬物動態研究所
成富洋一

 non-P450が関与するヒトPK予測に対しても注目が集まっています.また,ヒトPK予測は肝クリアランス等,主に肝代謝について検討されてきましたが,最近は肝外クリアランス,特に小腸クリアランスの予測が重要視されています.そこで2.ではnon-P450,肝外代謝のクリアランス予測について取り上げます.まず今回はnon-P450について考えてみたいと思います.・・・(続きはNLホームページへ

写真:平林英樹 いまさら聞けない薬物動態学の基礎-薬物動態の"罠"に陥らないための学習のコツ(5回シリーズ その3)
武田薬品工業株式会社
平林英樹

 今度は肝代謝でのみ体内からの消失を受ける化合物 Zの血液中薬物濃度 AUCを考える上で,肝代謝クリアランスがどのように全身クリアランスに寄与するのかを考察したいと考えたようです.そこで,見よう見まねで何とか図1のような体内コンパートメントモデルを仮定したのは良かったのですが,この後どうアプローチすればいいのかAさんには分かりません.・・・(続きはNLホームページへ

技術の窓
写真:関根秀一 サンドイッチ培養肝細胞を用いた薬物性胆汁うっ滞型肝障害発症リスク予測法
千葉大学大学院
薬学研究院 生物薬剤学研究室
関根秀一

 薬物性肝障害(Drug Induced Liver Injury (DILI))は様々な薬物で起こりうる可能性があり,特に重篤な肝障害が見られた場合には医薬品の市場撤退や候補化合物の開発中止に至ることもあるため,DILI発症リスクを前臨床試験の段階で予測することが重要です.DILIは臨床診断マーカー(Alkaline phosphatase(ALP),Transaminases(ALT, AST))の上昇の程度から肝細胞障害型,胆汁うっ滞型,混合型に分類され,胆汁うっ滞を含むDILIの割合が約40%を占めます.

 肝臓特異的な機能である胆汁流形成,胆汁排泄に寄与するトランスポーターの1つであるBile Salt Export Pump(BSEP)は胆汁酸を基質とするため,その機能が薬物により阻害されると,毒性の高い胆汁酸の蓄積を伴う胆汁うっ滞型DILIを引き起こすと考えられています.・・・(続きはNLホームページへ

DMPK 31(4)に掲載された各論文の「著者から読者へのメッセージ」

[Regular Article]
日本人健康成人を対象としたプラスグレルの薬物動態学的および薬力学的検討
Umemura, K., et al., pp. 285-291.

 抗血小板薬Prasugrelは欧米で先行して開発され,急性冠症候群によるPCI施行患者に対し初回負荷用量(LD)60mg/維持用量(MD)10mgで適応を取得したものの,欧米で行われた第III相試験の結果から,出血の増加が懸念された.このため,日本国内の開発では,有効性を維持しつつ出血を軽減できる用量の設定が重要な課題であった.本論文では,健康被験者を対象とした単回投与試験(2mg~30mg),反復投与試験(2.5mg~10mg,7日間)の結果,いずれの用量でも忍容性が得られたこと,単回投与では20mg以上,反復投与では5mg以上で,十分な血小板凝集抑制作用が認められたことを報告した.実際,Prasugrelはこの試験の後,PCI施行患者を対象とした第II相試験,第III相試験により,LD 20mg/MD 3.75mgで十分な有効性と安全性を示し,2014年に国内で承認されている.本論文で報告した試験は,日本人に適したPrasugrelの用量を検討する最初の臨床試験として,非常に重要な位置付けを持っている.

 

[Regular Article]
再発性性器ヘルペスの治療開発のためのAmenamevir (ASP2151)の統合的な薬物動態-薬力学モデリングとシミュレーション
Takada, A., et al., pp. 323-332.

 Amenamevir は,ウィルスヘリカーゼ/プライマーゼ複合体をターゲットとした新規薬剤である.米国にて実施した再発性性器ヘルペス患者を対象とした第2相臨床試験のデータを用いたPPK/PD解析では,非臨床試験で観察された薬効の用量依存性が明確には示唆されなかった1).そこで,非臨床試験結果と臨床試験結果の乖離について検討するために,Amenamevirの非臨床及び臨床結果を同時に説明する薬物動態/薬力学 (PK/PD) モデルを構築した.本モデルでは,PKとPDを連結するためのバイオマーカーとして細胞を宿主としたウィルスプラーク減少法のデータを用い,薬効のエンドポイントである皮膚病変スコアに対して順序カテゴリカルロジットモデルを用いた非線形混合効果モデル解析を行った.

 皮膚病変スコアの時間推移は,ウィルスプラーク数と免疫による治癒反応である発症後経過時間を用いて説明された.本剤のヒトの薬効は用量に依存するものの,治癒反応も皮膚病変スコアを減少させる影響因子の一つとなり,再発性性器ヘルペスの治療薬の開発においては免疫による治癒反応と薬物による作用を区別したPK/PDモデル解析の有用性が明らかになった.

1): Clinical Pharmacology in Drug Development 3(5) 365-370

技術・研究材料紹介(企業広告)
不死化ヒト肝細胞 Corning® HepatoCellsTM について
コーニングインターナショナル株式会社 
ライフサイエンス事業部 
和田格人

 Corning TransportoCellsは品目ごとに単一SLCトランスポーターをHEK293細胞で一過性発現する使い切り型の遺伝子導入細胞で,凍結状態で供給する.解凍/プレーティング後48時間だけトランスポーターを発現するので,この時間内に基質取り込み試験を行う.安定発現細胞株のように継代維持の必要がなく,必要な時に細胞を解凍してアッセイを行える.既に重要なヒトSLCトランスポーターの発現系をそろえているが,このほど動物のOatp1bとヒトOATP1B1変異型の製品を追加した.・・・(続きはNLホームページへ

(株)ジェノメンブレン
(株)ケー・エー・シー
(株)LSIメディエンス
(株)ネモト・サイエンス
シミックファーマサイエンス(株)
(株)新日本科学
日本ウォーターズ(株)
積水メディカル(株)