日本薬物動態学会 第21回ワークショップ

第21回日本薬物動態学会ワークショップおよび第1回ショートコース開催に向けて

ワークショップ代表世話人
ショートコース委員長
岩崎一秀(ファイザー(株)中央研究所)

Iwasaki

2007年4月12日(木)および13日(金)に、第21回日本薬物動態学会ワークショップを開催いたします。今回は「医薬品開発を加速化・効率化するためのボトルネック解消」をテーマとしています。また、ワークショップ前日の4月11日午後には「代謝物の分離・同定・予測」をテーマとしたショートコースを予定しています。多数の皆様の参加をお願い致します。

第21回ワークショップのテーマとした「医薬品開発を加速化・効率化するためのボトルネック解消」は、近年問題となっている医薬品開発の厳しい状況を反映したものです。ご承知のように、医薬品の開発には様々なボトルネックが存在し、これらを解消しなければ医薬品の効率的かつ迅速な開発に結びつきません。ボトルネックとして、創薬段階では創薬過程のスピードアップと成功確率の向上、ヒトにおける有効性・安全性・体内動態の予測精度の向上等が、臨床開発においてはPOC(Proof of Concept)の早期確認、治験基盤の整備・強化等が挙げられています。
創薬段階におけるボトルネックについては、いろいろな方面でその解消方法を検討されていますが、ポストゲノム時代の医薬品開発に期待されるシステムバイオロジーは、ターゲットの選定、バリデーション、スクリーニング等に威力を発揮することが期待されています。また、In silico創薬技術の進歩・発展は有効性・毒性(安全性)あるいは物性・薬物動態の予測精度の向上につながると大きな期待が寄せられています。今回のワークショップではこれらのトピックに焦点をあてることにより、ボトルネックの解消と創薬段階における加速化につながることが期待されます。
臨床開発においては、治験開始後に有効性が実証されないことあるいは毒性が発現されることにより、開発候補品の開発が中止に追い込まれることが多いことは最近発表された総説より明らかです(Nature Reviews Drug Discovery, 3, 711-715(2004))。このボトルネックを解消するために、FDAはヒトにおける有効性と安全性を臨床開発段階の早期に実証するためのガイダンス(Exploratory IND Studies)を今年初めに発効しました。また、有効性を検証するPK/PD試験においてバイオマーカー同定および測定の有用性は繰り返し報告されています。更に、ゲノム科学の進展により遺伝子変異と薬物動態や副作用等との関係が明らかとなり、これらの情報は医薬品の適正使用や承認審査に有効に使われるとともに、医薬品開発に有用な情報を提供するものと期待されます。以上のトピックに焦点をあてた講演がボトルネックの解消に貢献して、臨床開発における効率化につながっていくことを期待しています。
今回のワークショップは例年より講演数を絞って一演題当たりの講演時間を長く取っています。従いまして、講演内容がより包括的かつ充実したものとなり、参加者と講演者間で活発に議論され、医薬品開発におけるボトルネックの解消につなげるワークショップになることを希望いたします。

また、第21回ワークショップの前日には第1回ショートコースを開催いたします。今回のテーマは「代謝物の分離・同定・予測」です。代謝物の構造解析の有用性、LC/MS・LC/NMR等を用いた代謝物の構造解析手法、あるいは代謝物構造の予測について、気鋭の研究者の方々に講義をお願いします。近年の分析技術やIn silico技術の進歩・発展により代謝物の同定や予測は格段の進歩を遂げていますが、これらの進歩をまとめて習得できる絶好の機会であると考えます。皆様の参加をお願いいたします。