ニュースレター編集委員長から
日本薬物動態学会のさらなる発展を願って

DMPKニュースレター編集委員長
(東京理科大学薬学部教授)
玉井郁巳

Tamai

 この度、日本薬物動態学会誌Drug Metabolism and Pharmacokineticsのニュースレター編集委員会を、東京大学鈴木洋史先生、慶應義塾大学笠井英史先生及び萬有製薬千葉雅人先生と共に立ち上げることになりました。至らぬ点が多いとは思いますがどうかよろしくお願いいたします。

 今年度から本学会機関誌の「薬物動態」が英語版「Drug Metabolism and Pharmacokinetics、略称DMPK」として刷新され、世界に向けた薬物動態に関する情報の発信を目指すようになったことはご承知の通りと思います。海外発行の英文誌につきましては、本国からの投稿に比べ日本からの投稿に対するバリヤーは高い傾向にあることを経験されている方は多いのではないでしょうか。その結果としてオリジナリティーで遅れをとることもありえ、個人的には日本発の薬物動態に関する国際誌を望んでおりました。日本での薬物動態研究は諸外国に比べ決して劣ることはないものであり、名実相伴って斬新な成果を発信する学会誌としてDMPK誌が発展することを期待いたしております。

一方、学会としては学術論文の発信が中心とはなりますが、学会員の皆様への情報の提供や学会員間の交流の促進を通じた本学問分野の発展、ならびにそれら学術的要素を基盤とした学会自体の発展も重要であることは当然です。その目的を達成させる一つの手段として、DMPK誌の英語版化と同時に、日本語によるニュースレターの充実化の方針が立てられたと思います。

 このような流れの中でDMPKニュースレター編集委員会では、既に何度かの編集委員会を開催し、従来の日本薬物動態学会に不足する点や問題点を取り上げ、その中でニュースレターとして可能なことは何かを議論し、編集方針ならびに具体的な記事内容を勘案してまいりました。その議論からニュースレターを、「単なる掲示板ではなく、会員への情報提供及び知識・技術の還元を行うことにより、読者や執筆者の方がより積極的に参加しまた興味を持っていただけ、その結果として学会全体の発展に少しでも貢献する」ための場と位置づけ、その実現のために以下の点を意識した内容を盛り込むことにしました。

・対象が製薬企業人、大学教官及び学生、ならびに医療従事者など多彩であることから、専門分野外の内容についても理解を深められる魅力と継続性を持たせる。
・執筆者の主張が表れるような内容を求め、写真掲載などを含め執筆者個人を前面に出す。
・執筆者からの一方的伝達ではなく、読者からの質問やコメントを受け付けるなど本誌と読者の対話を重視する。
・ 上記目的を達成させるためには、編集委員会の判断にて執筆者に対して校正を依頼する。

というものです。研究分野としての発展は、結局構成員各個人の発展に依存するものであり、ある研究グループの一人ではなく、個性ある研究者から新しい展開のある研究グループができあがると考え、できるだけ各会員の意見を大事にする方針です。具体的には既に第4号から開始しました「DMPK誌掲載論文の著者から読者へのメッセージ」があります。本項では単なる掲載論文の要約ではなく、論文を通して著者が訴えたいポイントの紹介を意図しました。是非掲載論文をお読みになる参考にしていただくとともに、著者の方にはアピールの場として活用いただければ幸いです。また、主に国際学会に関する「学会印象記」では、学会全体の網羅的な紹介ではなく、一つのシンポジウムについてだけでも関心の持たれた点や国内との比較など、執筆者の意見・主張を述べていただくことを意図しております。これから会員の皆様にもお願いすることになると思いますが、趣旨をご理解の上ご協力いただけますようお願いします。また、ニュースレター編集委員としては、皆さんへの情報提供の場として新たに「レクチャーノート」と名打って継続的内容を含む記事を準備中です。薬物動態研究は、動態特性決定因子に関する基礎研究、医薬品探索・開発研究、そして臨床現場と直結した観点からの研究など幅広く、その中で必要な技術や理論も非常に多彩なのが現状です。動態のみならず薬効や毒性あるいは病態について、個体レベルから分子レベルまでの情報を活用して解析する必要がありますが、一研究者が深く全体を理解することは容易ではないと考えます。また、特に次世代を担う若い学生会員の方などにとっては、学会発表や論文等の内容について、極端な場合には語句や略称の意味すら明確ではなく、そのために理解が不十分になることもあります。さらに、各分野の先端的研究の動向や問題点などの現状は、専門外の場合に十分に把握することも困難です。従って、「レクチャーノート」では、特に専門外の方を意識し、特定のテーマで該当分野における過去・現状・将来を解説することを意図しています。この執筆は編集委員のみならず各分野でご活躍の先生方にお願いしており、2003年発行のニュースレターからの掲載を計画しています。テーマや掲載内容に対するご意見やご要望がございましたらお寄せ下さい。

 私は過去20年間薬物動態分野に携わっておりますが、その間だけでも本分野の進展はめざましいものがあります。しかし、薬物動態研究は全体として後付的な側面が多く、他分野での発見や技術の導入による解析研究が主流を占めているのが現状と思います。本学会が国内にとどまらず、国際的にも薬物動態研究において主導的な立場になるのももちろんですが、今後は一つの学問分野として確立されることを望みます。特に、医療・医学領域において薬物動態研究が一分野として発展し、他分野に情報・技術を発信できるような基盤を充実することが重要と考えます。そのためにも日本薬物動態学会を中心として、特に新しい展開や発想を期待できる若い学会員の情報交換や会員相互の切磋琢磨によって本学問分野のレベルを向上させることを期待し、その場としてニュースレターが少しでも貢献できればと願っています。

 私たちニュースレター編集委員は、薬物動態研究からの新しい発信を目指して、試行錯誤でまず何かを始めようと考えています。皆様のご意見、ご要望、ご批判、ならびにご協力をいただけますようよろしくお願いいたします。